元はラテン語で消し炭のスミの意である
この炭素に於いて20世紀の後半から様々な発見がされ、 人類の近未来に実に重要な役割[※1] を果たそうとしています。
炭素同素体は大凡以下のように分類できるでしょう。
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備考 | |||
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炭素原子60個で構成されるサッカーボール状の構造、更に原子数の多いフラーレンも存在する | |||
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グラファイトを構成する1層として古くから概念上は知られていたものが1987年に用語として登場 | |||
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発見者飯島澄夫氏、フラーレンの一種に分類されることがある | |||
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共有結合結晶、原子一個分しかない単一層のグラフェンが弱いファンデルワールス力で結合し多層化したもの | |||
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共有結合結晶、結晶構造は多くが8面体で、12面体や6面体もある天然で最も硬い物質 |
上表に於いて発見年を見れば上部3社はかなりその年代が新しいものであることが分かります。 人類が手にしてまだそれほど馴染みのない材料である訳です。 これ等の応用研究が進む中に、 更に炭素の新材料がその特徴も鮮明なものとして発見されるに至った[※1] のです。 その代表的なもの2つの特徴を挙げれば以下となります。
硬いものはカーネギー研究所の研究チームが発見した ダイヤモンドに傷を付けられるほど硬い炭素材料でまだ正式名称はないようです。 人工ダイヤモンド合成の新手法を開発している同チームならではの発見と言えます。 フラーレンC60と、有機溶媒であるm-キシレンを混合して 高圧化に置いて生成せられるものだそうで、 その硬さはダイヤモンドにキズを付けられる程だそうです。
そして軽いものは
エアログラファイトの先ず考えられる利用法は電池だそうで、 その軽さを活かせば重く煩わしいモバイルバッテリーなどにどれほど役立ってくれるでしょうか。 またその導電性と軽さを応用すれば 静電気レスプラスチック も可能だそうでこれが実現されれば乾燥した冬にも嫌な思いをしなくて済みそうです。 更には撥水性が高いことも確認されており素人でも応用の夢は広がります。
人類が古くから親しんできた炭が今尚最新のものとして応用が研究され、 近未来に大いに役に立ってくれそうなのには期待で胸が膨らみます。
追記1(2012年10月30日)
本記事に挙げる炭素同素体新材料の一つである カーボンナノチューブ について半導体素材の面から取り上げた記事 カーボンナノチューブ~近未来の半導体素材の代表 を配信しました。
追記2(2013年1月10日)
東北大学のCNTベアリング研究開発について 精密構造設計と量産を同時に実現する東北大学開発のカーボンナノチューブベアリング を配信しました。
追記3(2018年3月8日)
2012年10月30日配信の記事 カーボンナノチューブ~近未来の半導体素材の代表 にカーボンナノチューブを使用した不揮発性メモリであるNRAMの商品化について追記しました。
追記4(2019年6月27日)
本記事に於いて大別した炭素同素体には
最先端研究を伝える学術系メディアの academist Journal の2017年7月12日の富士通研究所 佐藤信太郎 主管研究員へのインタビュー記事[※6] では、中にもグラフェンを細いリボン状に切り取った グラフェンナノリボン に言及され、リボン幅によってバンドギャップが異なるという不思議な特徴、 及びナノチューブよりも其のバンドギャップを制御しやすい点を重要な特徴として説明されています。 以て半導体素材の微細化が進み、現在限界に達しつつあるシリコン半導体より集積度を上げられる目論見があるのでした。 グラフェンナノリボンの生成には当然ながらグラフェンを微細なリボン状に切る繊細な工程が必要なのですが、 実に困難を極める作業にて、佐藤主管の主張にはインタビュー時点に ボトムアッププロセス を利用して先ずは綺麗なグラフェンナノリボンを得るに成功していると言及されています。
そして、本日2019年6月27日に此のグラフェンナノリボンを世界で初めて完全精密合成したと
国立研究開発法人
科学技術振興機構(JST)
と
名古屋大学
が共同発表したのでした。
当該発表はJSTサイトに概要をまとめて配信[※7]
もされています。
此の完全精密合成に成功したのは名古屋大学の
伊丹健一郎
教授を中心とする
伊丹分子ナノカーボンプロジェクト
メンバーです。
従来のトップダウンプロセス及び前述のボトムアッププロセスから更に進んで開発した
リビング
今後、更に開発手法が進んで純正のグラフェンナノリボンを半導体材料として利用可能となれば、 軽くて曲げられる半導体に省電力の超集積CPU、小型大容量半導体メモリー、高周波デバイス、高感度センサー等々、実に幅広く応用出来るものと報告されています。 併せて名古屋大学は田岡化学工業株式会社と共同研究で 量産製造法の確立を目指すものともされていますので、 シリコンに取って代わった炭素同素体がスマートフォンなどの各種デジタルデバイスを大きく発展させるのも、そう遠くはない未来であると思われます。
参考URL(※)- ダイヤよりも硬く、羽毛よりも軽く――炭素が開く新材料(EE Times Japan:2012年8月31日)
- フラーレン(Wikipedia)
- グラファイト(Wikipedia)
- カーボンナノチューブ(Wikipedia)
- ダイヤモンド(Wikipedia)
- 次世代の半導体デバイスを支える新材料「グラフェンナノリボン」とは? – 富士通研究所・佐藤信太郎主管研究員に聞く(academist Journal:2017年7月12日)
- 共同発表:世界初、グラフェンナノリボンを完全精密合成~新しい高分子化反応「リビングAPEX重合」を開発~(科学技術振興機構:2019年6月27日)