ホンダCBX400Fの想ひ出

30年も以前に生産が終了したのは知りませんでしたが、 その乗り心地は今でも覚えています。 今や自動車メーカーとして世界でも名を馳せる 本田技研工業株式会社 の400ccバイク CBX400F が今現在大人気なのだそうです。

その余りの人気振りに中古車の値が高騰し、 果ては盗難事件が次から次へと発生し、 オーナーは保管に気をつけなければいけないのは勿論、 何と保険会社からは盗難保険の加入を拒否されてしまう[※1] とのことなのです。 市場での取引価格は発売現行車当時48万円の3倍から状態の良いものでは時に10倍! の値が付くとのことで、実際にネット取引されるサイトであるGooBike[※2] を調べて見れば 2012年9月7日の本日の相場として高い方から順に、 以下列挙する処のベスト10を見ただけでも空恐ろしいことになっているのが分かります。

  1. CBX400F II型フルノーマル:262.5万円(消費税込)
  2. CBX400F 国内II型 BEET:207.9万円(消費税込)
  3. CBX400F:180万円(消費税込)
  4. CBX400F カスタム:178.8万円(消費税込)
  5. CBX400F:170万円(消費税込)
  6. CBX400F-II:169.8万円(消費税込)
  7. CBX400F:169万円(消費税込)
  8. CBX400F 2型:168万円(消費税込)
  9. CBX400F フルメッキカスタム:165.9万円(消費税込)
  10. CBX400F 2型 オロチ管:160万円(消費税込)

この値が付くのはブリキの玩具と同じ理屈でしょう。 若い頃に事情で欲しくても手に入らなかった憧れのバイクを今、 収入的にも安定し或る程度の余裕もある40歳代のファンが手に入れようと 引く手数多と言う塩梅です。 しかも人気絶頂の頃に生産終了していれば希少価値が高まって、 レトロな感覚と今やオールディーズたるステータス感も醸成されているようです。

30年ほど以前はバイクブーム華やかなりし頃で、 猫も杓子もバイクに跨っていたのではなかったでしょうか。 H-Y戦争[※3] などもあり原付は驚くほどの安値で捌かれ自転車より廉かったものです。 老若男女問わず ロードパルパッソル で街を行ったものですし、 少し血気盛んな年代の者はロードバイクを挙って手に入れました。 特にヤマハの RZ250 は風前の灯だった2ストロークマシンに息を吹き返させ、 市販バイクをレース一色に染めたのでした。

これに対するホンダはお得意の4ストロークで打って出ます。 異色のエンジンレイアウトVツインは刺激的でした。 VT250F の登場です。 これも大いに受け入れられ此処にもHY戦争は鎬を削っていました。

これらが受けたのはそれほど金銭的に余裕の無い若者には 250ccと言う排気量は税制的に魅力があったからなのです。 中型免許の上限排気量となる400ccでは車検を通す必要があったのでした。 CBX400Fは其処に位置していました。 この制度上にも当時の若者の憧れであったのかも知れません。

決して遅いバイクでないのは確かですが、 ただただ飛ばすようなRZやVTよりは少しクールに構えていたのも確かだったでしょう。 それはホンダの旗艦車たるべく産まれた ホンダドリームCB750Four の流れを継ぐものでした。 中型排気量ながら血脈確かなインラインフォーエンジンは堂々たる威容を持ち併せていたのです。

当時には川崎重工業の誇る人気車種 Z400FX も有りました。 カワサキには当時からしてヴィンテージの香りも高き Z2ゼッツー750RS及びZ750FOUR) はCB750(シービーナナハン)の良きライバルですが、此方は角張ったデザインで ゼッツーを踏襲している感じは薄れていましたが、 ホンダはそれも鑑みたのか威風堂々たるCB750のデザインを上手く取り込んでいるように見えました。 CBX400Fの登場迄はホンダの当該排気量にはそれほど魅力的な車種が用意されなかったものの、 Z400FX(フェックス)に対抗すべく車種を用意して欲しいとの ファンの懇願からCBX400Fは産まれたのだとも聞き及びます。

絶版バイクFAN Vol.4(コスミックムック)
ヨンフォアのフィーチャーされた
絶版バイクFAN Vol.4(コスミックムック)

そしてそれは名車 ヨンフォア の流れを受け継ぎ産まれたのでした。 ヨンフォアとは ホンダドリームCB400Four の愛称です。 その名称からも明らかなようにこの機種は正しくCB750の兄弟車です。 しかしこの名車は免許制度改正の丁度端境期に生を享け、 法の規制から限定免許では乗れなくなり数奇な運命を辿りやがてカタログから消えていたのでした。 CBX400Fはこのような経緯の中から産まれた ホンダファン待望のバイクだったと記憶しています。

当時RZ250に跨っていた頃、友人はCBX400Fを所有していました。 或る時、数日取り替えようと相談が纏まりました。 レーサー発祥の2ストロークRZとキングオブロード発祥の4ストロークのCBXの その余りに異なる由来、素性にお互いがお互いを試したくなった末の話しでした。

爆発的な加速とその軽量さからの俊敏性が売り物のRZから乗り換えたその一番記憶に残る印象は まるでモーターのようなエンジン だと言うものでした。 スロットル開放に若干ラグがあって急峻に盛り上がるRZに対し、 CBXはスロットルへの追従性が素直で開けたら開けただけエンジンが回ったのでした。 そしてその走りは スムース の一言でした。 高回転息では強力なパワーを見せるのは勿論ですが、 CBXを駆っている間、実に滑らかに街を行ったのを今でも覚えています。 まるで少し紳士になった気分が味わえたものでした。

ほんの僅かの邂逅でしたが 斯くも印象に残っているCBX400Fが今日、 この如き盗難保険からも拒絶されるほどの人気を誇っていると聞き、 現所有者の方々には些か申し訳無いながら、 何だか嬉しい気持ちになりました。

参考URL(※)
  1. 盗難保険入れないオートバイ…30年前生産終了(読売新聞:2012年9月7日:2019年6月30日現在記事削除確認)
  2. ホンダ>CBX400F>全国の物件一覧(GooBike)
  3. HY戦争(Wikipedia)
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする