デフレスパイラルに錐揉み上に景気が減退すれば 安売り合戦の止まる処を知りません。 YKK戦争とも呼ばれる安売り合戦を生き抜き今や大資本となった 家電量販店と言えどもその影響を免れないのは かたむき通信にも記し[K1] ました。 そして今、讃岐うどんを全国的に広めた立役者であり、 1949年創業に製麺メーカーとして設立、創業63年の老舗でもある かな泉 が2012年11月12日、営業を停止しました。
2012年11月15日現在、 店頭には定休日の看板が置かれ保全管理人による張り紙が空しく貼られ、 讃州うどんの庄 かな泉 のホームページ(2019年7月3日現在サイト閉鎖確認)には孰れのページを訪れても以下の文言が寂しく表示されるのみです。
謹 告衷心よりご報告申し上げます。
昭和28年の設立以来、今日に至るまで、皆様には一方ならぬお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
弊社は、平成24年11月12日をもちまして、全ての営業を終了することとなりました。
長年のご愛顧に心より感謝申し上げます。
平成24年11月13日株式会社うどんの庄かな泉
うどんの庄かな泉が本拠を置くのは勿論香川県高松市、 讃岐うどんの製造、販売からうどんを扱う実店舗を運営し、 多店舗展開も図られそのピークには四国、中国、近畿に10店舗以上が有りました。 知名度も向上し1989年5月期の売上高は24億8千万円を計上していました。 土産用のうどん販売も伸張し、うどんのネット通販にも進出する勢いがあったのです。
しかし時代は同社の勢いが続くことを許しませんでした。 長引く景気低迷です。 宴会需要は徐々に減り、逆におか泉、飯野屋、なかむら、丸亀製麺など 観光客に人気の有名うどん店など競合は増え、 本記事冒頭にも記したようにセルフスタイルを売りにする激安うどんチェーンが台頭しては 苦戦を強いられざるを得ません。 加えてバブル期に投資を失敗したと言うお決まりの噂も聞かれます。 そして21世紀に入ってからは不採算店を相次いで閉鎖、 店舗は高松本店と空港店、倉敷美観地区の店舗の3店に迄減ってしまったのです。 売上も店舗数減少に連れて低迷し2011年5月期は7億5,200万円に落ち込み、 赤字は1億円近くあったとされます。
こうとなっては経営も行き詰まり遂には今年2012年4月20日に 高松地方裁判所へ民事再生法の適用を申請、5月に再生法の適用を受けていたのでした。 此の時の負債総額は約8億円とされていました。
その後、勿論経営再建を目指して7月には東京の投資会社 スピードパートナーズ[追] とスポンサー契約を締結[※1] し、同月設立した かないずみ に経営権を譲渡予定でしたが債権者の金融機関との間で協議がまとまりまらず、 今回の営業停止を余儀なくされたのでした。 関係者の話しとして負債総額は6億192万円とされています。
追記(2019年7月3日)
不首尾に終わったものの、 かな泉 の支援を申し出た東京都中央区の株式会社 スピードパートナーズ は2006年5月に設立されたモバイル事業を主とする情報技術関連企業でしたが、 企業再生も取り扱う事業形態から発生した本記事の事案でした。 2009年から2010年に掛けては、 浜松市の注文住宅販売を業務とする 富士ハウス 株式会社 や、東京のエステティックサロン経営の株式会社 ラ・パルレ 、大阪に不動産開発を商う 大和システム 株式会社など、かなり周知された倒産案件支援を手掛けたりもしていました。 創業者の白石伸生氏はかないずみ案件と同年の2012年11月にはプロレス団体の全日本プロレスを買収して話題を集めたりもしています。 2012年に此の かな泉 案件はありましたが、 2013年8月には 八丁堀投資 株式会社と商号変更しましたから、企業再生に軸足を移したものかも知れません。 こうして他社を救う事業に軸足を移した同社でしたが、 実は2011年の東日本大震災以降の住宅事業の不振から2012年には資金繰りに問題を抱えるようになっていました。 本記事に紹介した如く金融機関が難色を示したのも那辺に事情があったのかも知れません。 2014年には未払が恒常的となり、4月10日には債権者から破産を申し立てられ、 遂には5月13日に東京地裁から破産開始決定を受ける[※2] に至りました。 2013年1月期には22億5712万円の最終赤字を出していたと言いますから、 孰れ かな泉 は救われぬ運命だったのかも知れません。
かたむき通信参照記事(K)- 曲がり角の家電量販店~YKK戦争も今は昔、忍び寄るネットの影(2012年9月27日)
- 株式会社うどんの庄かな泉に関するスポンサー契約締結のお知らせ(株式会社スピードパートナーズ:2012年7月10日:2019年7月3日現在サイト閉鎖確認)
- (株)八丁堀投資(旧:(株)スピードパートナーズ)ほか1社(東京商工リサーチ大型倒産情報:2014年5月16日)