SNSに向けられる厳し過ぎる目の妥当性を考える

新興メディアのインターネット中にも新興の SNS(ソーシャルネットワークシステム)は旧来メディアの厳しい視線の元にあります。 一時世論に持ち上げられただけに内なる怨嗟も相俟って 勢いに翳りが見えたときは余計叩き甲斐を持ってしまうのかもしれません。

些か内容が厳し過ぎるように見える記事は2012年7月28日のMSN産経ニュースの 米「SNSバブル」破裂 (2019年5月8日現在webサイト閉鎖確認)です。 4~6月四半期決算が相次いで発表されるのを見て 様々な憶測を含めた報道がなされるのですが、 これをSNSに重点を置いて見た時にその凋落振りが 一時の盛況から見てバブルが弾けたものだとする内容になっています。

記事に取り上げられるSNS企業は以下の3つ。

  • Facebook
  • Zynga(ジンガ)
  • グルーポン

先ず槍玉に挙げられるのは先頃上場を果たした Facebook で、その上場はかたむき通信にも2012年5月19日に FacebookがGoogle超え上場、時価総額9.1兆円~問われる市場調達資金の使い道 として取り上げました。 上場以来初の決算報告は各方面から注目されもしたのです。

結果は1億5,700万ドル、日本円にして約123億円の赤字でした。 更には去年同期は黒字でしたからそれ見たことかと鬼の首を取ったように伝えられる報道が目立ちます。 確かに赤字ですがこれは株式上場に伴う株式報酬関連費用が嵩んだもので 売上高は市場予測を上回っており アクティブユーザーはPCからもモバイルからも順調に増え続けているのです。 ただ赤字であるに因って成長に翳りとするのは些か短絡的の感があります。 短期的な高騰を狙う投資家には魅力的ではなくなったかも知れませんが、 一旦戦線の伸び切ったこの上場時にそれを望むのは愚かと言うものでしょう。

因みにこの決算発表に興味深いのは売上高が前年比32%増で 其の内広告によるものは28%増、全売上に占める割合は84%と低下していることです。 また発表に伴ってはかたむき通信2012年5月29日の記事 Facebookの独自スマートフォン開発の可能性を考える に考察したFacebook製スマートフォンの可能性がマークザッカーバーグCEO自らに あっさりと否定されたのが残念でした。

閑話休題、MSN産経ニュースに翳りの見られるSNS企業の2番手に上げられる Zynga はソーシャルゲームを主業務としますから 先ずはSNS企業と見ても問題はないかとも思われます。 なんとなればSNSで人々が過ごす時間の多くはソーシャルゲームに費やされるからです。 Acenumber Technical Issuesブログの Angry BirdsとゲームとSNSとの深い関係 にはそれを40%もの時間ともしています。 SNSに於いてゲーム企業が収益を上げる可能性は高くSNSと密接に結び付いていると考えられる訳です。 Zyngaはソーシャルゲームの最大手ですからSNSの効果を図るに取り上げるのは尤もです。

そのZyngaは確かにTechCrunchの2012年6月27日の記事 Zynga、意欲的発表にもかかわらず株価は5%急落 にも明らかなように株価は年初来安値をつけるのも尤もな低迷振りを暫く以前より示しています。 Acenumber Technical Issuesブログの2011年12月4日の記事 Zynga(ジンガ)上場~ソーシャルゲームとモバイルの深い関係 にその上場を取り上げた際には日本のソーシャルゲーム企業に比較した低利益率と その方向性が問題としてあります。

実はZyngaの周囲を見渡せば大きな動きが見られるのでした。 それは日経新聞の2012年5月16日の記事 米国発「オンラインカジノ合法化」のインパクト に代表されるものです。 米国に於いてオンラインカジノが合法化される方向に進むのに合わせ Zyngaが施策を進めていると言う訳です。 此処にZyngaの株価に於いてはSNS云々よりオンラインカジノ合法化の比重が大きくなるのが当然でしょう。 またZyngaとしてはFacebookプラットフォーム一つに依存する経営こそ問題であるでしょう、 インフィニティソリューションからは2012年6月6日、 Zynga、IaaS市場に参入。Amazonと競合。 (2019年5月8日現在記事削除確認)が配信されています。 Amazonと対抗すべきIaaS市場はそれ程SNSと関係の深いものではありません。 Zyngaの低迷はこれ等SNS以外の施策が投資家に問題視されている可能性もあるのです。

そして グルーポン 株価の年初来最安値が取り沙汰されているのですが、 これをSNS衰退の代表の一つと見るのは些か牽強付会に過ぎるように感じられます。 確かにフラッシュマーケティングものはSNSと親和性が高いものですが、 その強引な手法に疑義が持たれたのは今に始まった話ではありませんから、 ここにSNS勢の一角として持ち込むのには少々無理があるでしょう。 何としてもSNSのビジネス的な効果を落としめんとする意図が感じられもします。

インターネットを通じて従来の物理的制約が取り除かれ 遥かにコミュニケーションを取り易くなった人々の関係性をソーシャルと捉え、 SNSに表象させた時その関連ビジネスが衰えた、即ち新興メディアがが否定された、 と旧来メディアや関係者は思いたがる処でしょうが、それは無理な話しです。 例えSNSが衰えソーシャルゲーム企業の売上が低迷し、 ソーシャルを通したクーポンの発行数が減ろうともそれは一面的なものであり、 メディア転換の流れは不可逆なものでアナクロな人々の思う通りには運びはする筈もありません。

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