画期的!痛くない注射針は岡野式、青柳式のどちらもが日本発で蚊がモデル

子供には我慢しなさいと言っておきながら いざ自分の番となるとなかなか直視は出来ないものが注射ってもんです。 若しかしたら年を取った方が怖くなってきたかも知れない…。 だからってわけじゃありませんが 痛くない注射針 は皆があったら好いなと多分子供の頃から思っていた夢の注射針。 増して世の中には一日に何度も注射を打たなくてはならない病気を抱えた方もいるんですから、 その潜在需要は大きいのでしょう。 その痛くない注射針、全く異なる出自で2種類存在し そのどちらもが日本発なんです。

一方は既にそのキャラクター自体が有名で 彼の小泉さんも総理大臣時代に視察に訪れたと言う 岡野工業 の大将、 岡野雅行 さんが医療を通じて社会に貢献するのが企業理念の テルモ株式会社 と共同で開発した ナノパス33 (2019年5月25日現在記事削除を確認しましたので新たにテルモ社の2011年10月18日付けのプレスリリース テルモ、中国で糖尿病ケアに貢献 世界で最も細いインスリン等投与用注射針「ナノパス33」本格発売 にリンクを貼り置きます。)です。

このナノパス33は外見だけでなく内径迄が 先細りのテーパー状を為していると言う今迄世の中になかった注射針、 これを岡野さんは突拍子もない方法で拵えてしまいました。 パイプを矯めたり眇めたりするんじゃなくって一枚の板を丸めちゃったんですね。 ちょっとWeb上に情報が見付からないんですが以前に呼んだ岡野さんの著作では 最初に板に幾つも穴を開けておけば先っぽの穴から液が通るだけじゃないんで 先が細くなっていても目詰まりしないんだって意味のことが書いてあった気がします。

何にしろ画期的なこの注射針はテルモ社が100社を巡っても 何ともならないと言われ続けて諦めかけていた処に やっとのことで岡野さんが引き受け、遂に両者で共同開発となった経緯がTech Onの2005年5月27日の記事 テルモ,痛くない先細注射針を岡野工業と共同開発 に配信せられています。 オマケにこのナノパス33は日本産業デザイン振興会の選出する2005年度 グッドデザイン賞大賞 を受賞、これは何とあのアップル社のiPodを押さえての受賞となりました。 この詳細もTech Onに2005年10月25日配信の グッドデザイン賞,大賞は「iPod」などを抑えて世界一細いインスリン用注射針 に紹介されています。

この痛くない注射針の発想は岡野さんとテルモ社担当者の話の中で じゃあ蚊と同じだろ ってったら そうです なんて掛け合いから始まったそうで、 そんなインタビューがNTTコムウェアのコムジン2006年2月号 第33回岡野雅行さん で紹介されます。 岡野さんの記事は矢張りインタビューが好いですね、 生粋の江戸っ子で吉原辺りが遊び場だったてぇ粋なべらんめぇ調の話し言葉も楽しめますから。 勿論岡野さんの著作はこの特徴を活かしたものが多く、こちらもお薦めです。

さてもう一方は最近俄かに注目を集め始めました、 と言うのもTBS系のテレビ番組 夢の扉+ に2012年5月6日に取り上げられたからのようでその時のタイトルも 蚊の技術で痛くない注射を! 、そうなんですね、こちらの 痛くない注射針 も発想を蚊に依っているんですね。 世界に類を見ない痛くない注射針がどちらも日本発で しかもその発想を蚊から得ているなんてちょっと痛快な感じがします。

こちらの痛くない注射針の開発者は 関西大学システム理工学部教授の 青柳誠司 さんでロボットアームなどを研究開発する生粋のエンジニアなんだそうです。

さてでは青柳式痛くない注射針はどのような仕組みかを見てみれば 岡野式痛くない注射針とは全く出自が異なることが分かります。 青柳式では先ず蚊が実際に刺す場面の撮影から始まったそうなんです。 この撮影だけでも大変な手間だったとか、 遂に撮影に成功したら実に意外なメカニズムが発見されました。 その応用こそ青柳式痛くない注射針なんですね。

青柳式痛くない注射針の秘密はPDFファイル 蚊の口器を模倣した マイクロニードルの作製 にまとめられていて誰でも見ることが出来ます。 これには何故人間は蚊に刺されても痛みを殆んど感じないかの理由が以下のように挙げられいます。

  1. 蚊の針の直径が50~60μm程度と痛点を避け易い
  2. 蚊の針(上唇,子顎)の先端が3次元的に尖鋭である
  3. 子顎が独特のギザギザ形状をしている
  4. 各パーツが協調運動する

1番から3番についてのその素材や加工技術などについてなど 実に見るべき部分が多いですし、 2番などは岡野式のテーパー状と同様の理由として挙げられるものだと思います。 中にも面白いのは4番だと思います。

各パーツと言うからには複数の部品で針は構成されていると言うことになり、即ち 針が3本で構成されている と言うことなのです。 え?1本でも痛いのに3本に増えたら尚更痛いんじゃないの?と思わせられるんですが、 実際に蚊の針(口器)は上唇と2本の子顎の3本から構成せられているそうです。 そしてそれらが協調運動をすると痛みを感じさせなくなると言う主張ですね。

協調運動とはこの針に於いては3本が一辺に刺さっていくのではなくて 別々に連携を取りながら刺さって行くイメージだと思います。 この連携を取らない一辺に刺さるもの、 また連携の取り方を2種類変えてみたもので取ったデータがPDFファイルの20頁目に公開されていて、 実に興味深いものとなっています。

データに於いては痛みを 穿刺抵抗 でシンプルに置き換えているのも興味深いと思いました。

予想通り連携を取らない刺し方が一番抵抗が多く、 3本の針の連携の取り方に於いては 3本が順番に深く刺さっていくものがその次に抵抗が大きく、 一番抵抗が少ないのは 上唇が先に少し刺さったら子顎がセットで次に少し進んで また上唇が深く喰い込んで行くと言った感じのものとなっています。 子顎のギザギザは釣り針で言う返しのような効果を産んでいるのかも知れません。 尚連携に於いては30Hzと言いますから1秒間に一連の連携を30周期繰り返すことになり、 印象としてかなり高速での連携が取られているようです。

青柳式では実用化の於ける課題が挙げられ なお改良が試みられている様ですが、 テレビで放送されてから既に1月半、 然るべき企業と既に連携などが取られているかも知れませんね、 まるで上唇と子顎のように。

岡野さんと言い青柳さんと言い 矢張り技術者が活躍すると日本は元気になるに違い有りません。

追記(2013年3月5日)

本記事の如き高い技術力を持った岡野氏のお眼鏡に適った機械式腕時計について 岡野式腕時計愛好の一つの形~パテックフィリップ・ノーチラス を配信しました。

追記(2013年8月6日)

2013年3月5日追記の岡野氏愛好の腕時計ノーチラスのデザイナーであるジェラルド・ジェンタ氏について バイきんぐ御用達オーデマピゲ・ロイヤルオークのデザイナーのジェラルド・ジェンタ氏 を配信しました。

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