日産ノート発表、ハイブリッド車の支配する市場にディーゼル車に続きダウンサイジングで挑む

低燃費を多くの人々が求めるのは間違いありません。 エコカーなどとエコが冠されたりそれが補助金と結び付いたりすると 魑魅魍魎の跋扈し確かな情勢が見えなくなるものですが 自動車メーカーは惑わされず燃費の追求に余念がないのは適切だと言えるでしょう。

低燃費自動車の流れは主に2系統に分かれます。 一つは日本ではトヨタのプリウスを嚆矢とするハイブリッド車、 レシプロエンジンと電気モーターとの組み合わせで低燃費を実現する 日本人にはお馴染みの低燃費自動車群です。

もう一方は欧州勢が得意とするディーゼル自動車です。 ディーゼルと言うと日本ではあまりにそのネガティブな面が流通し切ってしまったために 公害車の代表という感じで好い印象は持たれていません。 喘息の元だし黒い煙を撒き散らすし寄らないで欲しいと言った感すら抱かれています。

このディーゼルに対する日本の評価を見る時、 一旦悪く印象付けられるとなかなか取り返しが付かないことになる良い事例で 様々な教訓が得られますが欧州では既にこの状況にはありません。 2011年、日本に於いては印象通り乗用車新車販売に占めるディーゼル車比率は 0.3%とほぼ誤差と言っても良いくらいの小さく悲しいものですが、 こと欧州の市場ではディーゼル車の割合は54.9%に達しているのです。

この欧州に於けるディーゼル車躍進の事情は日経新聞2012年6月25日の記事 欧州発ディーゼル車の逆襲 日本のハイブリッドの脅威に に詳しくあります。

発端は1997年独自動車部品メーカー Boschボッシュ が開発した画期的システム コモンレールシステム を搭載した2車 アルファロメオ156JTD 及び メルセデスベンツC220CDI でした。 実はこのコモンレースシステムをボッシュに先駆け世界で初めて実用化したのは日本の 株式会社デンソー です。 このシステムを説明するページも同社サイト上に 環境技術開発物 コモンレールシステム[追2] として用意されています。

しかし日本人が選んだのは同年発売されたハイブリッド車 プリウス だったのでした。 日本に於いて2大潮流をなす低燃費自動車の選択が1997年に行われていたのは実に興味深い処です。

此処に於いて日経記事では世界の潮流を見た時に ハイブリッド車のガラパゴス化を懸念しています。 日本で独自の進化を遂げた携帯電話の事象に例えたものです。 そして今、欧州から大挙してディーゼル車の波が押し寄せる様を同じく日経新聞が 本日2012年7月17日に記事 エコカー技術、競争激化 ディーゼルも復権の兆し として配信しています。

この記事には欧州車の攻勢と共にかたむき通信にも2012年5月23日の記事 CX-5の好調なマツダがFIATとオープン2シータースポーツカーで提携発表 で伝えた SKYACTIV-D 2.2 (2019年7月14日現在、CX-5専用サブドメインの停止を確認しましたので、 新たにマツダ社のSKYACTIV TECHNOLOGY採用ディーゼルエンジンの専用ページ SKYACTIV-D にリンクを貼り置きます。)を搭載したディーゼルモデルの マツダCX-5 が好調さ所以に紹介されています。

そして日経記事に同時に冒頭で取り上げているのが日産の採用する ダウンサイジング技術 です。 この技術は今世界潮流となっている技術で 低燃費自動車の第3系統目をなすものですが技術時代は既存技術の流用で 古くて新しい概念と言えるものです。

基本的に自動車の内燃機関は排気量を小さくすれば燃費は向上しますが 動力性能が低くなってしまいます。 この動力性能の低下を一時期は高出力化の代名詞であったスーパーチャージャーや ターボチャージャーなどの過給機を用いて抑制すれば、 動力性能は其の儘に燃費は向上する理屈で、 この考え方を ダウンサイジングコンセプト と呼んでいます。

このダウンサイジング技術を梃子に日産が世に送り出そうとしているのが CMの 低燃費少女ハイジ でお馴染み NOTEノート です。 日産はこのノートの新型を2012年9月初旬から発売すると 7月16日に横浜市で開かれたイベント発表、車両を初公開しました。

新型ノートはダウンサイジングコンセプトそのままに エンジン排気量を現行モデルの1500ccから1200ccに小型化した上で過給器を組み込みました。 燃費は現行車が18km/Lに対し新型は新型無段変速機(CVT)の採用も相俟って 25.2km/Lと大幅に向上させなお、過給器により加速性能は落としていません。

これをトヨタのハイブリッド車アクアと比較した際には燃費性能こそ劣るものの、 コスト高となるハイブリッド車に比し価格はかなりの廉価が予測され、 消費者としては喜ばしい限りで人気を呼ぶことが予想されます。 日産もこれを織り込み年間35万台以上の販売計画を立てており、 生産は福岡県苅田町の日産自動車九州でを予定しますから 国内生産100万台体制の維持に活躍する車種としても期待され、 不況の続く日本経済に取っても有り難いダウンサイジング車となっています。

元来ダウンサイジング技術は既存技術の流用で、 ディーゼル車にも応用は効くものです。 従って攻勢が始まった欧州ディーゼル車がこれを採用すれば ますます日本ハイブリッド車勢には厳しい状況が呈されるものと思われます。 これに対してガラパゴス化を招かぬよう、 ハイブリッド勢の研鑽精励が期待されます。

追記1(2012年7月30日)

トヨタとBMWのHV関連技術協業決定の報を受け トヨタがBMWとの提携でHV勢として対ディーゼルに有効な一石 を配信しました。

追記2(2019年7月14日)

デンソー社のコモンレールシステムに関する当該ページは2019年7月14日現在削除されて閲覧不能ですが、 以てコモンレールシステムに更なる進化を齎しめたという新技術 i-ART(intelligent Accuracy Refinement Technology:自律噴射精度補償技術) の専用ページ “知能”を持った ディーゼルエンジン に新たにリンクを貼り置きます。 此のデンソー社独自の技術は圧力センサを小型化してエンジンのインジェクタに組み込むことで噴射の状態を検出可能とし、 10万分の1のズレさえ許さず自動修正するという細やかな制御を実施することでディーゼルエンジンのパワー、燃費、環境性能を大幅に向上させる、と説明されています。 此の革新的新技術、i-ARTは既にボルボの環境対応エンジン Drive-E シリーズに採用されているともされます。

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