女性サイトのカフェグローブ破産に考える中小零細ネットメディアの方向性

前世紀末、インターネットの盛り上がり始める中、 様々な形のホームページが登場し、 女性向けに女性視点で情報を届ける 女性サイト がブームとなった時期がありました。 そのブームが去るや淘汰が始まったのですが、 その厳しい状況を女性サイトの正しく草分けとして生き延びた カフェグローブ を運営する 株式会社カフェグローブ・ドット・コム は先月2012年7月は23日に東京地裁へ準自己破産を申請しており、 この度8月10日に破産開始決定を受けました。 負債総額は1億900万円[※1] とも1億800万円[※2] ともされており、大型倒産速報に取り上げられるには切込体長が言うようにはした金[※3] なのかも知れません。

1999年に立ち上げられたカフェグローブは 多くの女性サイトが消えていく中でも2008年には 約800万の月間総べージビュー、約40万人月間ユニークユーザーを誇っていました。 それでも当時ネットメディアからの脱皮を図ろうとしたのか中核サイト カフェグローブ (2019年9月11日現在のアクセスに於いて他ドメインへのリダイレクト処理確認)の他にも通販サイト SELECT cafeセレクトカフェ やブログサービス cafebloカフェブロ を展開、更には同年1月にライフスタイルシンクタンク cafeglobe生活研究所 を開始するなど様々な方面に展開をし始め[※4] ます。 しかし、功を奏することなく時には足枷にもなり事業譲渡なども意図する状態であったようです。

収益資源の分散化の計画が目論見通り運ばない処へ、 主事業の一角を占めるべきWeb制作事業は競合が乱立して価格競争に苛まれ、 中核サイトの広告収入も逓減しては最早なす術もなかったようです。 貧すれば鈍す、士気の衰えた社内には遂に横領も発生してしまいました。 今回の仕儀は必然の成り行きでした。

カフェグローブの破産に至る様を概観した際、 矢張りそれを以て起業を果たしノウハウも豊富で中核事業たる ネットメディア に社内リソースを集中させる方向はなかったのかと要らぬお節介を考えてしまいます。

メディアと広告の関係は長くて深いものですから ネットメディアとてその軛から自由ではいられません。 広告に依存する体質はごくごく普通のものですが、 経営側としては収益源が限られてしまうのも不安であるのは尤もです。 従って適宜同社が物販やプレミアム会員獲得を企画したのは不適切とは言えず、 むしろその施策は必須でしょう。 しかしそれに連れてコンテンツ側を多角化するのは旨くないのかも知れません。 飽く迄中核サイトを中心にした収益源のマルチ化が図られるべきだったのだろ思います。

さてそのとき、中核情報サイトをネットメディアとして更に展開するにあたっては 従来マスメディアとの競合は恐らく絶対的に避けるべきなのです。 カフェグローブはマスメディアに変わらんとまともにぶつかった感があります。 それはサイトに速報性も持たせることだったり、 有名人コラムニスト、テレビタレント的文化人を採用したりすることです。 なまじ当時はそれを実現するだけの体力が有ったのが反って災いしたのかも知れません。

この方向性を一度取った時に その企業規模を鑑みなければ手痛いしっぺ返しを喰らい カフェグローブと同じ轍を踏むことになるでしょう。 恐らくリソースの乏しい小規模のネットメディアは 速報性や一般受けするコンテンツに手を出すべきではないのです。 なんとなれば圧倒的企業体力にまさる従来メディアにこの方面で決して勝てはしないからです。

従来マスメディアが商売であるからには 顧客ターゲット層に向けた記事を用意して顧客満足度を得るという方針は 巷間しばしば言及される処です。 思うに中小零細ネットメディアこそがこの従来メディアが展開した方針を それ以上に先鋭化させ自身に備える必要があるのです。 其処では速報性よりも一般化よりも独自の謂わば偏奇なものこそ尊重されるかも知れません。 逆に従来マスメディアはこれまでマスコミが期待されながら果たせなかった 速報性や一般化、延いては公正な報道にこそ生き伸びる道があるのではないか、 と考えます。

参考URL(※)
  1. インターネットショッピングサイト運営女性向けウェブサイト運営の草分け株式会社カフェグローブ・ドット・コム破産手続き開始決定受ける負債1億900万円(帝国データバンク:2012年8月16日:2019年9月11日現在記事削除確認)
  2. (株)カフェグローブ・ドット・コム[東京]ウエブサイト販売・運営破産開始決定/負債総額 約1億800万円(東京商工リサーチ:2012年8月16日)
  3. カフェグローブが破産(やまもといちろうブログ:2012年8月16日)
  4. 人気女性サイト「cafeglobe.com」に見る、女性向け媒体の生き残り策とは?(日経トレンディネット:2008年6月10日:日経トレンディネットは2019年6月末を以て記事の提供を終了しています。)
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