環境省では本日2012年8月28日、 絶滅のおそれのある野生生物の種のリストである レッドリスト について第4次として取りまとめたものを公表[※1] しました。 平成18から19年に掛けての取り纏めを公表した第3次リストに引き続き 平成20年度より見直し作業を進めて来た結果が反映されたもので、 絶滅の恐れのある種は第3次の3011種から3430種へと増加しています。 この平成の世にも僅かな期間でこれだけの絶滅の声を聞くのは恐ろしくもあります。
鳥類ではかたむき通信にトキについてその復活の喜び[K1] とレッドリストの見直し[K2] について伝えましたが、絶滅に瀕した種を絶やさぬ努力は斯くも険しい道のりとなります。 日々絶滅に脅かされる種が増えているのを伝えられればなお、遣る瀬無さを感じさせられます。
足掛け4年で419種の絶滅の恐れのある種の増加、 これが今日本のあからさまな現状です。 特に昆虫類、貝類がその数を伸ばしてしまっています。 実に日本に野生の生物は住み辛くなったのを示すかの如くあれば 単なる数値が悲しく見えるのは尤も、 今回、新たに絶滅判断のなされた種は哺乳類3種、鳥類1種、昆虫類1種、貝類1種、植物2種でした。
昆虫類や貝類は新しく研究の進んだ分も考慮されれば 吾人に就中親しみのある哺乳類が3種、絶滅認定されています。 其れ等は以下列挙する処です。
特にニホンカワウソは遂に日本では野生は見られないものとなってしまいました。
絶滅と目されるには相応の猶予期間が設けられ、 予てより危惧を抱えた時期が長くあります。 私的考察ブログさんでもカワウソについて2006年の時点で憂慮し記事[※2] にしています。 カワウソが河童のモデルとされることや、 人間を怖がらないエピソードなど微笑ましくも紹介しています。 愛嬌もあって人間に愛されるカワウソは高い知能をも併せ持ち、 環境適応能力も高くあれば必ずどこかで細々と生きている筈と信じる処のものも 公式には否定される処となってしまいました。
カワウソの毛皮は光沢があって上質で乱獲が絶滅に追い込む要因でもありました。 上に九州地方のツキノワグマが絶滅と認定されたとありますが、 北海道のヒグマについて吾人が注意すべき問題点も挙げられています。 エサやりがクマを殺す と言う[※3] のです。 正に熊のためを慮っての行為は要らぬお世話でありなり熊達を窮地に追い遣っていると言うのですから、 川獺とは全く逆方面ながらも我々が注意せねばならない点でしょう。
なんとなればクマは人の食べ物の味を覚えると、 人里恋しくなった如くごみ置き場を荒らし、キャンプ場や車に寄ったりするそうで、 それが駆除へと繋がるのだそうです。 観光客が無邪気に餌を与えた熊が観光客に被害を及ぼすとして駆除される、 何とも罪深い行為を知らず知らずに私達はなしてしまっている、 それを地元知床財団が啓発すべくキャンペーンを張ったのでした。 人と野生動物の関係を考えるに実に示唆深いものと言えるでしょう。
環境省は今後もレッドリスト掲載種について解説したレッドデータブックの改訂作業を進め、 平成26年に公表する予定であるそうです。 この方面を絶やさぬようにして欲しく思います。 また次回見直しがなされたレッドリストに於いて 絶滅の恐れのある種の数が増えないことが 切に望まれると考えるのは誰しも同じなのではないかと思います。 このような数字が増えるのを日本の原風景が失われ、 身体の一部を一つづつ捥がれていく感があるとするのは、 人の身勝手と謂われるのを覚悟しながらも決して嘘ではありません。
かたむき通信参照記事(K)- 36年振り日本産野生トキ誕生を環境省小型カメラが確認、わく地元と関係者(2012年4月23日)
- 野生のトキ芽出度く8羽皆巣立ち環境省がレッドリスト見直しへ(2012年6月26日)
- 第4次レッドリストの公表について(お知らせ)(環境省報道発表資料:2012年8月28日)
- ニホンカワウソの考察(私的考察:2006年5月29日)
- 「エサやりがクマを殺す」――知床財団が刺激的啓発作戦(読売オンライン北海道:2012年8月23日:2019年9月22日現在記事削除確認)