青春少年マガジン~新人3バカトリオの時代

週刊少年マガジンの創刊は1959年3月、 従って2009年には半世紀を数えました。 この年、創刊50周年と銘打って数々の漫画化が記念漫画を少年マガジン紙上に掲載しましたが、 中にも単行本一冊分にもなる連載として異彩を放ったのが 小林まこと さんの 青春少年マガジン1978~1983 でした。

漫画家小林まことと言えば 12の三四郎柔道部物語 など格闘技もののヒットで知られます。 格闘技ものとは言っても共にその作家の人間性からか何処かしら可笑しみの感じられる作品です。 この方式を更に推し進めたものが大ヒットとなった猫のマイケルが主人公の What's Michael?ホワッツマイケル? ですね。 青春少年マガジンは小林まことさんのそんな作品群のエッセンスが 総て詰まったような作品となっています。

若い漫画家同士の交流を描いたものと言えばやはり トキワ荘 ものとなるでしょうが、青春少年マガジンもその雰囲気を感じさせる処があります。 小林まことさんと大の仲良しとなる2人と合わせマガジン編集部から 新人3バカトリオ と命名された3人組を中心に沢山の漫画家さんが登場します。 勿論神様も登場しますよ。

漫画家さんが自身をネタにするにはお馴染みの〆切りでも、 自身を美化する辺りでも、 漫画家には欠かせない編集者ネタも、 どれを取ってもとても愉快な気持ちにさせてくれます。 マイケル誕生の編集者さんとの遣り取りなど、 当時は勿論そんな経緯は知りませんから、そうだったのか、 とオールドファンは当時を思い出しながらも楽しめるでしょう。 マイケル以外にも小林まこと作品のトリビアでいっぱいです。

そしていつしか3バカトリオも新人ではなくなり互いに切磋琢磨し合い、 ヒットを重ねつつ、それでもやがて別れがやってくるのでした。 これをただただ悲しい気持ちにさせるばかりではなく、 そこはかとない笑いをも含んだペーソスとして見せてくれる辺りで 見る側も何となく安心させてくれるのも小林まことさんならではの作品だと思えます。

とても面白い青春少年マガジンですが、 この作品はクリエーターが見た際にも興味深い作品となるのはその成り立ち故でしょう。 小林まことさんの作劇術、ドラマツルギーが随所に垣間見られるのですね。 例えばデビュー作の 格闘三兄弟 で主人公が柔道で勝ち進むのは方向として決まっているのですが ただ勝ち進むのでは面白くないから何か一工夫を…という塩梅です。 この答えの一工夫は近い内に 小林まことさんの漫画の書評をもう一つブログ記事にする予定ですので其方で(笑)。

勿論、青春少年マガジンにはその答え以外にもストーリー構成に関するヒントが詰まっていますし、 また単行本に纏められた巻末には 格闘三兄弟 の全編が収められてもいますから、 わざわざかたむき通信の記事を待つ迄もありません。

追記(2012年8月15日)

記事内のドラマツルギー、 一工夫 について言及した 1・2の三四郎2・ザ・スーパーマン を配信しました。

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