沖縄アヒル汁の家鴨はグルメなフランス鴨と同じバリケン種

沖縄県の食生活はなかなかに県外の人々の興味を惹くものが多く、 かたむき通信に記事のメインとして取り上げただけでも ジャーマンケーキ 〔K1〕 や、 イソアワモチ 〔K2〕 があります。 そして今又人気テレビ番組、カミングアウトバラエティ 秘密のケンミンSHOW の2012年9月27日の放送分で沖縄県民愛好の アヒル汁 が取り上げられました。

アヒルとは例の公園の池などを泳ぎ、 愛嬌もあってしばしば玩具にもなり、 かのディズニーのドナルドダックのモデルともなったあのアヒルです。 沖縄県民ならぬ人々はなかなかにアヒルを食用とするイメージが沸きませんが、 考えてみれば高級料理の代名詞たる 北京ダック だってアヒルの皮なのでした。 皮だけ食して身を食べないなど有り得よう筈もないではありませんか。

沖縄県民に聞けば高級でパワーがつく料理であり、 可愛いけど鶏肉は勿論、牛肉よりも美味しいとされ、 何処で食べられると問い返せば食堂や居酒屋で気軽に食べられるとの応え、 番組に紹介されたのがちょっとワイルドな拵えの沖縄県南城市 まんぷく食堂 であり、こちらは少々ご婦人方のお口にも合うような調理の沖縄県名護市の 名護曲(なごまがり)レストラン でした。 後者などは観光客にも琉球料理の食べられると良く知られたレストランですが、 どうにも観光客にはメニューに堂々と記される アヒル汁 の4文字がピンと来ないらしく、華麗にスルーされ、 注文するのは地元の人ばかりで、多くの観光客が訪れるものの 遂には今日迄広く県外に知られることのなかったアヒル汁なのでした。 矢張り観光客にはなかなか地元は見え難いもののようです。

まんぷく食堂に注文して出現したのは 大根、人参、昆布と一緒に煮込んだちょっと赤身のワイルドなルックスの アヒルの肉が放り込まれたお椀です。 見た目に脂っこいのかと思えば然に有らず、 むしろアッサリとしているのにコクも有って柔らかく 脂も程好く乗っていて癖も臭みも無く 肉自体の香りがとても良いのだと召した人は口々に言います。

まんぷく食堂のレシピが番組に紹介された処では、 アヒル肉の様々な部位のぶつ切りをそのまんま寸胴へ放り込んで1時間半ほど煮込んだ処に ぶつ切りの大根と人参と昆布を投じ、其の後、塩のみで味付けしてから 更に30分程煮込めばアヒルの出汁も濃厚なアヒル汁の完成です。

一度食せば滋養があって元気になると言うアヒル汁は 沖縄県民には古くから喘息や風邪に効くとされており、 何故そのように言われるのかと問えばそれこそアヒル汁のルーツであったのです。 琉球大学新城明久名誉教授に依れば14世紀後半頃から中国との交易が盛んに行われた 沖縄には食文化も自然に伝来し、その一つがアヒルだったと言います。 中国からアヒルを食べる食文化が伝来したと考えられる 当時の中国では肉料理は凡そ薬膳料理であり、 アヒルは特に呼吸器系の病気に効果がある食材とされたいた その認識がそのまま琉球に伝わったのだろう、とのことなのでした。

斯くも沖縄県民に愛好されるアヒル汁は名護曲レストランでは 一日に30食~40食も出るそうで、 改めてその肉のアヒルを問えば全身白い一般的なアヒルを使う店もあるけれど、 名護曲レストランで使うのは顔が赤っぽいアヒルなのだそうです。 勿論沖縄県にはこの赤っぽい顔のアヒルの畜産を家業とする人々もあり、 沖縄県うるま市ファーム仲西さんもその一つ、 実はこの赤顔のアヒルは 観音アヒル と称し、17世紀中頃に中国から渡ったアヒルの一種と言います。 この観音アヒル、一般的なアヒルと比べ脂肪分が少なくヘルシーなのだそうです。 沖縄に使用のアヒルの異なるお店があるのもその好みに依るのでしょう。

食した人々からは鴨の方が癖があるくらいとの鴨肉と比較する言があったりもします。 即ち見た目も鴨肉と似ています。 それもその筈、アヒルは漢字に 家鴨 と書く通り鴨の家畜化した種なのでした。 鴨南蛮に鴨鍋、治部煮に鴨ローストと、 アヒル料理に違和感を感じる向きも鴨料理なら多く召す処ではないですか。 また多く食される合鴨とて野生のマガモとアヒルとの交雑交配種ではありませんか。 そう考えればアヒルを食用と見なかった沖縄県民以外の方が意外な感があります。

鴨の家禽化されたアヒルは世界中に分布し、従ったその種類にも様々あって、 実はこの観音アヒルは日本に見られる一般的な全身真っ白なアヒルとは異なり、 バリケン なる種類のようです。 〔※1〕 このバリケンとは南米産のノバリケンを家禽化したもの言い、 フランス鴨タイワンアヒル麝香アヒル などの異名も取るそうです。 南米が原種となると中国伝来として疑問も沸きますが、 台湾アヒルや麝香アヒルなる名を聞けば宜成る哉、ともなります。

またフランス鴨と聞けば成る程グルメ通をも唸らせようと言うものです。 フランス鴨について 〔※2〕 はこれも様々種類があって、中にも ミュラール種 なるものはカナール・ド・バルバリーなる種と 北京種(チェリーバリー)の雌を掛け合わせた種と言いますから 観音アヒルと近いかも知れません。 このミュラール種は実はフォアグラを採るための鴨として知られているのだそうですから グルメ向きのアヒルであるのは言う迄も無い処でしょう。

北京ダックにフォアグラにと見れば見るほどグルメなアヒル肉は、 沖縄ではスーパーでも普通に売られている、即ち家庭でも極く普通に食べられている食材です。 秘密のケンミンSHOWの出演陣からは思い思いに、 カレーの肉にしたら好いんじゃないか?とか、 アヒル汁に麺を入れたらきっと美味しい、とか、 このスープで玉子雑炊拵えたら好いかも?とか、 アヒル肉も美味いがアヒル肉が出す旨みを吸った野菜はさながら高級オデン、 などなど新レシピの飛び出す始末、 若しかしたらこの番組を切っ掛けに多くの新レシピが考案されて 鴨や合鴨と共にアヒルは全国に広く利用される食材となる可能性も有りや無しや。

かたむき通信参照記事(K)
  1. ジャーマンケーキは100%アメリカンの沖縄特産?~秘密のケンミンSHOW発(2012年6月8日)
  2. 沖縄県伊是名(いぜな)島イソアワモチは南のアワビか?味噌と絡めれば絶品食材(2012年7月12日)
参考URL(※)
  1. ノバリケン(Wikipedia)
  2. フランス鴨について(株式会社マツヤ:食の情報・食材豆知識)
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