ドコモ800億円の下方修正はiPhoneの所為にあらず

日本に於いては携帯キャリアのトップ企業 NTTドコモ が2013年3月期第2四半期決算説明会を昨日2012年10月26日に催しました。 公式ホームページにもIR情報として関連ページが作成[※1] され関連資料が上げられています。 社長のプレゼン後の質疑応答[※2] などには2013年3月期の連結営業利益予想に施された 実に800億円もの下方修正が厳しく争点とされています。

ドコモの中期ビジョンに語られる新領域事業成長に拠る売上目標1兆円

この説明会はメディアにも取り上げられ[※3・4] 特にスマートフォンの競争激化を受け販売促進に800億円の追加費用を積み増す事案及び 顧客流出の下げ止まらない事案へのiPhone5の影響が想定より強めである、という 社長の言が取り上げられるものとなっています。 そして下方修正を取り戻すべく投資が順調に行われていると強い自信を以て述べられる処です。

この新事業に於いて目指す売り上げが1兆円とドコモの中期ビジョンに語られる処で、 その内容が上に掲示する図、説明会資料として配布[※5] された33ページ目の内容となっています。 しかしこれが投資家及び顧客に取って懸念材料、画餅となるのは かたむき通信にも繰り返し記事にして来た処なのでした。

図に有る通り新規事業は以下とされています。 売り上げ目論見とともに記しましょう。

  • 金融・決済:2,500億円
  • インターネット通販:3,000億円
  • メディア・コンテンツ:3,000億円

インターネット通販 に於いては同社がアマゾンを追うと豪語し タワーレコードを買収した際にかたむき通信に記事[K1] にしました。 この際、何処のドコモユーザーがこの新規事業を喜ぶだろうかと疑義を発しました。 更にはらでぃっしゅぼーやなどと共にこの新規事業に気炎を上げるドコモを その目指す処のオーナー経営者 ジェフ・ベゾス 氏率いるアマゾンの企業体質と比較の上、その成功可能性の低さ[K2] を論じました。 説明会に居並んだ経営幹部連が自らユーザーサポートの現場に立てるだろうか、 なる方面から考察したものです。

メディアコンテンツ に於いてはその肝とも言える国民の財産とも言える アナログ放送波の停止した電波帯に多額の投資をして迄推進した NOTTV が大失敗に終わった事案を記事[K3] にしました。 これはかたむき通信に言うばかりではなくタレントの 伊集院光 さんが2012年8月6日のラジオ放送でも言及[※6] し、更には日経産業新聞の記事から必要契約者数の推移グラフを作成した 世界はあなたのもの。 さんの記事[※7] を見れば当該事業計画が正気の沙汰とは思えないものとなっているのが明らかです。 この素っ頓狂な新事業にドコモの秋冬モデルのスマートフォンは対応を迫られ、 NOTTV対応機能が半強制的に備えられるというのですから 必要としないのに負担を負わされるユーザーは溜まったものではありません。

最も成功可能性の高かろう 金融・決済 事業は契約顧客あってこそです。 しかし上に見た如く同社のユーザー軽視は最早度しようがないものとなっています。 従ってこそ顧客流出は下げ止まらず、 説明会の質疑応答に加入数値は下げ切っていない、と指摘され、 解約率が下がらない限り、ジリ貧であると断ぜられるのです。 当然の反応として解約率が下がらないのはどうしてかとの質疑内容が発せられ 具体的対策を求められるのに対しては戦略上の理由からノーコメントと応答されてしまいました。 今は利益より加入数を上げたい、とし下方修正はその意思である、 と例え代表が言及しても空しく響くのみでもありました。

この質疑応答の於いて財務責任者はドコモにはコストの削減余力があり、 キャッシュフローも生成能力には自信を持っている、 と応じもしましたが後者は上記からあてにはなりませんし、 従って前者の貯金を切り崩すしか方策はないとも伺える始末です。

質問者からはこの説明会をして 800億円の下方修正が何故起こったのかと言う説明の無い ドコモでも過去にない不誠実なプレゼンであった、 と断じる意見も提示されました。 現在の経営はキャッシュを燃やしているだけではないか と言うこの上ない鋭く厳しい指摘も飛び出したのです。

ドコモの説明会に巻き返し策としてサービス事業を拡充するとした新事業は 決して期待出来るものではありません。 なんとなれば既存ユーザーの期待する方向であるとは到底思えないからです。 勿論望まないサービスの負担を押し付けられていつまでも黙っている程 ユーザーはお人好しではないのです。 然るに顧客転出に繋がっているのが全く分かっていない様子は些か訝しくもあります。 空手形の如き新事業に色気を出さずに土管屋に徹するのがドコモに最も好適な方針であるにも関わらず、 敢えて新事業に手を出すのは代表の言葉とは裏腹に利益維持を図りたいに違いなく、 必然的に加入者数は減少傾向を示します。

今回の争点となった下方修正は一時的なものと当然ながらドコモは主張しますが 若しかしたらこれが長期凋落傾向の兆し、発端となるのかもしれません。 一部投資家からはそう考えられた結果の現在のドコモ株価でしょうし、 少なくとも転出した通信顧客のその確信は固いでしょう。

通信で上げた利益を通信顧客に還元せず無駄遣いばかりすれば当然の帰結として 下げ止まらない顧客流出は招かれるのでした。 iPhone5は単なる象徴に過ぎず根本原因ではないのです。

かたむき通信参照記事(K)
  1. NTTドコモがタワーレコードを子会社化しEコマース事業進出を目論む(2012年6月11日)
  2. NTTドコモが通販事業本格進出で目指すアマゾンコムとの企業体質の比較(2012年7月13日)
  3. 哀れNOTTV大失敗~4ヶ月経過して契約数は目標の1/3以下(2012年8月6日)
参考URL(※)
  1. 2013年3月期 第2四半期決算説明会(NTTドコモ:2012年10月26日)
  2. 2013年3月期 第2四半期決算説明会(動画)(NTTドコモ:2012年10月26日)
  3. ドコモが減益予想に下方修正、iPhone対抗でスマホ販促費を追加投入(ロイター:2012年10月26日)
  4. ドコモ、iPhone対抗策が収益圧迫 13年3月期は一転減益(日経新聞:2012年10月26日)
  5. 2013年3月期 第2四半期決算説明会資料 (PDF形式:1.62MB) 63ページ(NTTドコモ:2012年10月26日)
  6. 伊集院光が語る「NOTTVが失敗したワケ」(世界は数字で出来ている:2012年8月8日)
  7. 「NOTTV」の白昼夢的事業計画に、生きる勇気をもらった(世界はあなたのもの。:2012年10月11日:2019年11月27日現在Webサイト404未検出確認)
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