中山製鋼所私的整理報道否定の翌日にアモルファス事業新設分割発表

私的整理を大手メディアが伝えたのを当日中に即座に否定するニュースリリース 本日の一部報道について として配信したのは大阪市大正区に本拠を置く中堅鉄鋼 メーカー 株式会社中山製鋼所 です。 創業は1919年、即ち戦前からの老舗メーカーで 2012年11月29日に私的整理により再建を目指す旨、報道されたのでした。 インターネット上に自社発信メディアを有するのが当然となった現在、 メディア報道に対して直後にリリースを配信するのは珍しいことではなくなっています。

しかしその翌11月30日同社は再びニュースリリースを配信しました。 会社分割(新設分割)および新会社の第三者割当増資による 株式会社産業革新機構との合弁に係る投資契約書締結のお知らせ です。 三光汽船の再倒産についての記事[K1] に倒産の一形態に私的整理があるのを挙げましたが 私的整理にも形態が幾つかあります。

Steel works in Osaka 中山製鋼所 photo credit by Crystalline Radical

弁護士法人ITJ法律事務所が運営する破産再生.comの記事[※1] に分かり易く、それは以下列挙する処など挙げられています。

  • 私的整理
  • M&A
  • 会社分割

法人事業再生には様々なバリエーションがあるとも記されていますが、 会社分割 も私的整理の一形態であり、メディア報道の大枠の異なる処ではありませんでした。

私的整理の長短所について以下引用すれば

私的整理は、手続が柔軟で迅速に進む他、秘匿性があるため、 事業を毀損するおそれがないという長所があります。 しかし、裁判所が関与しないため、 合意に達することのできなかった債権者と問題が生じる可能性があったり、 手続において債権者同士の公平性が問題となったりするという短所があります。
とされており、報道に因って思惑と異なる介入が発生するのを 債権側は嫌うのは尤もでしょう。 企業再生支援機構が主導するとも報道されましたが、 矢張り私的整理と言う手法を取るのに対し疑義が発せられもしたようです。 債権放棄を要請される金融筋には債権が厳しい情勢であると言う 見方をする向きも少なくないようです。 従って未だ紆余曲折を見せるだろうというのが大方の見解となっています。

鉄鋼メーカーにこの如き厳しい予測が為されるのも ご他聞に漏れず長引く不況があるのは勿論で、 また此処に来て大阪を本拠とする同社には関西電力の電気料金値上げは 鉄鋼メーカーの中にも電炉メーカーであれば生産コストの3割が電気料金で占められるに因って 一段の収益悪化は免れないのも追い討ちを掛けます。

不況に需要が縮小する中、鉄鋼メーカーには独自の理由も含有されます。 中国鉄鋼メーカーの躍進がそれです。 近年大きく生産量を伸ばす中国の鉄鋼メーカーが 日本や米国の鉄鋼メーカーからシェアを奪う傾向が顕著ともなっているのでした。

この状況下に鉄鋼メーカーがどのような手を打つべきなのか、 新日本製鐵に長く鉄鋼畑を歩きキャリア45年を有する現在 日鐵住金建材株式会社 の代表取締役社長を務める 増田規一郎 氏は2012年11月29日放映のテレビ番組 カンブリア宮殿 に出演した際、 鉄だけを売るのではなく鉄に付随した技術を売らねばならない、 と言及しました。 同代表のテレビ出演については同社ホームページに2012年11月30日付けで TV東京系列 『日経スペシャル カンブリア宮殿』で当社の特集が放送されました! がお知らせとして配信されています。 同番組では同社が技術の塊である鉄を通して 安全を商品としている様子が活写されています。

鉄の技術集団を自負する日鐵住金建材の鉄から派生し安全を付加価値とした商品は 数百を数えますが以下のものが代表として挙げられます。

  • ノンフレーム工法 土木鉄構商品(防災商品) :2009年特許取得の最新技術であり土砂崩れを防ぐ。 豪雨だけでなく地震にも強く、自然にも優しい商品。
  • 鋼製スリットえん堤 T型 土木鉄構商品(防災商品) :豪雨による河川の氾濫に被害を大きくする流木や岩塊を交えた土石流を防ぐ商品でシェアNo.1。
  • ガードパイプ 防護柵商品 :板状ガードレールの見通しの悪さを改善した商品。 大型トラックのはみ出し走行をも防ぐ強度を持つ。
  • 3層構造化学強化ガラス :高速道路防護壁の上部用ポリカーボネートに変わる新素材。 高層ビル用強化ガラスの数倍の強度(衝突物の低飛び出し距離)と安全性 (低破片飛散度、破片粒度の細かさ)を持つ。
  • 津波避難タワー セーフガードタワー 防災対策商品 (2019年12月27日現在記事削除確認の為、関連ニュースリリース 津波避難タワーニュース に新しくリンクします):東日本大震災に見舞われた同社の仙台工場が実体験を元に開発した商品。

ノンフレーム工法やスリットダム、ガードパイプは既に多く導入され 災害、事故から人命を守るに活躍しています。 また3層構造化学強化ガラスやセーフガードタワーも 孰れその能力が発揮され活用が為されるのが期待されています。

日鐵住金建材は増田社長の元、建材の製造、販売から防災技術に大きく舵を切り、 今やその1,000億円の売り上げの4割を占める迄に成長しているのでした。 中山製鋼所の再建に於いても金融機関の懸念を払拭するには 斯様な付加価値を持った商品開発が必要とされるのは論を俟たず、 同社は新設分割するアモルファス事業にその期待を託しています。

使用写真
  1. Steel works in Osaka 中山製鋼所( photo credit: Crystalline Radical via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. 戦後最大の倒産で会社更生法適用の三光汽船が再び倒産(2012年3月10日)
参考URL(※)
  1. 法人事業再生:法人の債務整理について(2019年12月27日現在記事削除確認の為類似記事 債務整理(法人) に新たにリンクします)(弁護士法人ITJ法律事務所:破産再生.com)
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