小田原城に多層遺構発掘され戦国期の庭園が発見さる

江戸時代には徳川譜代の大久保氏に与えられた 小田原城がその規模を縮小したのは最早戦国の世にあらねば尤もにて 三百年泰平の世を閲したその城郭は応じた遺構を持ち それは現代に新たな発見として齎されてもいます。

小田原城のジオラマ photo credit by Vaice-A
小田原城のジオラマ photo credit by Vaice-A

大化より勘定しても1,368年を有する日本史は それ以前にも連綿たる繋がりを持てばかたむき通信2012年12月25日の記事 拡大する日本最大級弥生遺跡~高知県田村北遺跡発掘調査成果公開 に見られる如く縄文と弥生と古代が一箇所に地層を織り成してもいるのです。 中世から近世に掛けての城郭とてそれは同じでした。

小田原城跡にて平成22年度より史跡整備に伴う発掘調査が進められていたのは 御用米曲輪 でした。 御用米曲輪とは御城米曲輪とも言い米蔵の印象もありますが、 其れが位置するのは小田原城の何と中央、本丸に当たります。 実はこの御用米とは御用とあるだけあって小田原藩のものならずして徳川家のもの[※1] なのでした。 江戸期小田原城は小田原藩主のものにはなく徳川将軍家の出城として位置付けられるもので 城の中心部たる本丸には将軍家専用本丸御殿が建てられており 小田原藩主の居館は二の丸にありました。

従って御用米曲輪こそ歴代小田原城の中心部と目して宜しい訳で、 小田原市に依り発掘[※2] がなされ、その成果も上がり、折に触れ現地説明会など開かれそれは見学者のブログなどに共有[※3] されもし、江戸時代の蔵の他に後北条氏の城だった頃の 石垣のある障子堀 などの遺構も垣間見え、 粛々と発掘は進められれば更に去年2012年夏には江戸時代の 瓦積塀 を発見、この時も見学会[※4] が催され、それもまたネット上に共有[※5] されています。

発掘が進む中去年2012年年末に齎されたニュースが庭園跡の発見でした。 既に一部発見が報告されている後北条氏の礎石建物跡と一揃いのものではないかと推測されるものです。 従って江戸期の御用米曲輪が後北条氏時代にも中心部であると目され、 発掘計画の見直しをすら強いられる展開となりました。 新聞系のオンライン情報は削除されることも多いので下に毎日新聞の記事[※6] を引用しておきましょう。

小田原城跡「御用米曲輪(くるわ)」(小田原市城内)の発掘調査で、戦国時代の庭園跡が確認された。同曲輪では今夏に小田原北条氏の主殿の一部とみられる「礎石建物跡」が確認されているが、新たに庭園跡が見つかったことで、同曲輪内に戦国期小田原城の中心の一つがあった可能性がさらに高まった。【澤晴夫】

10年から開始した同曲輪の調査は、江戸時代の米蔵など遺構整備に伴うものだが、主殿級の建物の一部と庭園跡がセットで見つかったことにより、同曲輪の整備方針は見直しを迫られそうだ。

庭園跡から出土したのは、池に水を引き入れるための石組水路や築山(つきやま)、庭石などで、礎石建物跡と石組水路の軸線がほぼ一致していることも分かった。石組水路には地元の風祭(かざまつり)石や鎌倉石が使われているほか、五輪塔の火輪部分だけを貼り付けた護岸遺構も見つかった。

調査に当たっている市文化財課は、本丸側の山を借景にした庭園で、福井県にある戦国大名・朝倉氏の一乗谷城「湯殿跡庭園」に類似したものとみている。借景にした山は江戸時代になって崩され、曲輪内の埋め立てに使われたことで、主殿や庭園跡など戦国時代(16世紀中〜後期)の遺構が良好に残存したと見られている。

この重要な発見に関しては孰れ 小田原市 | 文化部:文化財課 にも掲載されるでしょうが、 今の処は未だ情報として上がって来ていません。

史跡小田原城跡御用米曲輪 大きな地図で見る

往々にして役所系列のWeb対応が後手後手に回るのは かたむき通信にも何度も見て来ましたが 小田原市に於いても例外ではないようで、 長い間情報発信の習慣が無くプレスリリースに頼って来たからには 一般にメディアの報道で以て知って貰うのも致し方なくはありますが、 それではホームページを持つ意味が薄れもします。 またホームページの中に情報求めようとするものの極めて探し難く 自ら発信する情報をなるべくなら他人に見せたくない場合には 先ずはお役所のものの代表のようなこのホームページを真似れば良い、 とすら思える作りが些か残念なものでもあり体制の改善を以て 一般へのマスコミへ齎されると同等のスピード開示が求めらるものです。

使用写真
  1. 小田原城のジオラマ( photo credit: Vaice-A via Flickr cc
参考URL(※)
  1. 小田原城さんぽ 第3回城米曲輪~徳川家兵糧米が二万俵以上も~(JOY POST:2020年1月21日現在記事削除確認)
  2. 御用米曲輪の史跡整備を進めています(小田原市:2012年3月7日)
  3. 小田原城御用米曲輪発掘調査現地説明会(KemaAkeの雑記帳:2012年2月10日)
  4. 御用米曲輪で新たな発見!(8月18日(土)見学会開催)(小田原市:2012年8月11日:2020年1月21日現在記事削除確認)
  5. 小田原城御用米曲輪の発掘調査現地説明会に行きました(アファナンテ:2012年8月18日)
  6. 小田原城跡:発掘調査 曲輪から庭園跡出土 戦国期、城中心の可能性(毎日新聞神奈川:2012年12月29日:2020年1月21日現在記事削除確認)
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