バージョンアップを重ねても重ねても一向に速度が改善せず 〔※1〕 好い加減匙を投げ気味となって立ち上げる機会も失われれば、 遂にはシェアも低下し人材も流出し、 辛うじてGoogleに屋台骨を支えられる状況も出来し 〔※2〕 孰れは漸次消え去るのではないかと思われていたブラウザ Firefox(ファイアフォックス) がいつの間にか存在感を弥増していたのが去年2012年の夏辺りから、 終盤に掛けては俄かに話題の中心となって盛り上がって来た経緯があります。
ブラウザは元来インターネット上のホームページを閲覧する為のソフトウェアであったのでしたが、 インターネットが世の中に存在感を増し、延いては社会インフラとして必須のものとなる状況下、 従来プロプライエタリなローカルPCで作動するものであったソフトウェアが ネットを通してブラウザ上で稼動するものが多く普及、利用されるようになり、 それはパソコンのキラーソフトたるメーラーに於いても例外ではなく、 従ってブラウザこそがインターネットの窓口として ユーザーに環境の全てを提供しても良いのではないか、と言う主張に達するのは自然でした。 これを最初に体現したのがGoogle社の提供するブラウザを元にした Chrome OS であり、この基本ソフトウェアを採用したPCは既に販売される処でもあります。 〔K1〕 此れに続いてFirefoxが基本ソフトウェアとして機能せんとした Firefox OS を以て大いに世の耳目を集め始めたのでした。
ブラウザに由縁するOSが其の真価を発揮するのはモバイル端末であったでしょう。 そして其れはポストPC時代の要請に応えるものでもありました。 OSの筆頭たるマイクロソフト社のWindowsさえ次世代のOSである Windows 8に其れを強く意識しなければならなかったのです。
そのポストPC時代に提供される基本ソフトウェアとして 存在感を失うWindowsを尻目に鎬を削っているのがアップル社の iOS とGoogle社の Android でした。 マイクロソフト社は自社製OSを採用するにしても ポストPC時代に従来PCを販売していたメーカーが採用する基本ソフトウェアとしては iOSがアップル社の独占下にある中にはオープンに提供されるAndroidしか選択肢はなかったのです。
こうしたGoogle社の実質的な支配下にあると言う事態はPC製造メーカーにも痛し痒しと言ったものだったのは確かですし、 日本に於いてはフューチャーフォンの時代に思う儘に市場をコントロール出来た 携帯キャリアに取っては尚更歯痒く何とかしたい状況でした。 NTTドコモでは実際Googleの影響を受けない基本ソフトウェア Tizen(タイゼン) の採用を検討し始めてもいました。 〔K2〕 此のような状況下に登場したのがオープンソースに端を発し、一営利私企業の背景を持たない Firefox OSの登場だったのですから注目が集まらない筈もありませんでした。
PCメーカー、携帯キャリアと共に興味を示したのがアプリ開発者達です。 Firefoxの示すオープンな姿勢はアプリ開発者には好まれる処でもあります。 そしてFirefox OSに於いてはHTML、CSS、JavaScriptと言うホームページを作成する際の技術が活用出来るのも大きいでしょう。 IT技術者がブログなどに取り上げる 〔※3〕 頻度も今年に入って来てから間違いなく増えて来ています。
Firefox OSに参入の噂されていた携帯キャリア KDDI株式会社 も遂に公式に手を挙げました。 〔※4〕 そして実際にハードウェアを製造するメーカーからも参入を報じられる処となったのが ソニーモバイルコミュニケーションズ です。 〔※5〕 ソニーの参入はZTE、Alcatel Mobile Phones、Huawei、LG Electronicsに次ぐ5社目となり 此れを皮切りに日本からも参入が相次ぐものと予想されます。 日本でのFirefox OS搭載スマートフォンの発売もそう遠い日ではないのかも知れません。
スペインのバルセロナではFirefoxを開発、運営するMozilla(モジラ)財団が主催の記者会見が催されCEOの ゲイリー・コバックス(Gary Kovacs) 氏が登壇し詰め掛けた報道陣を前に発表を行いました。 〔※6〕 この会見ではZTEの実機が紹介され稼動する様子の動画も紹介されていますので下に共有しておきます。
追記
(2017年2月5日)
本記事の配信よりちょうど4年、
Firefox OSが失敗したとの情報がCNETの2017年2月2日の記事
〔※7〕
によりもたらされました。
モジラでOS部門を担当するガジェットグループに属する50名が解雇されたとのことで、
文責を負う
Stephen Shankland
氏の当該案件への質問に部門長の
Ari Jaaksi
氏が芳しい反応を見せられなかったのも宜成る哉でしょう。
モジラは財政的な逼迫状態にはない面を主張し
Iot
(Internet-of-Things)へと舵を切る方針も述べたとされます。
Tizen(タイゼン)も死に体を呈し
Microsoft社のWindowsモバイルOSも鳴かず飛ばずであれば愈々
Google社の
Android
とアップル社の
iOS
の2強時代が判然となる裏付けの報道ともなりました。
- Developer preview( photo credit: fczuardi via Flickr cc)
- Chrome OS採用Chromebox発売で強まるGoogle・サムソン連携とアップルとの微妙な関係(2012年5月30日)
- NTTドコモの思い切ったTizen(タイゼン)の採用は吉か?凶か?(2012年12月30日)
- バージョンアップを重ねても重いFirefoxを何とかする小さな対策(はなまるチェック!:2012年2月8日)
- 揺れ動くFirefoxと屋台骨を支えるGoogle(はなまるチェック!:2011年12月21日)
- Firefox OS(naoyaのはてなダイアリー:2013年1月24日)
- 「Firefox OS」搭載端末の導入に向けた取り組みについて(KDDI株式会社プレスリリース:2013年2月25日)
- ソニーモバイルも「Firefox OS」に参入 2014年に端末発売へ(ITmedia:2013年2月26日)
- HTML5で作られた「Firefox OS」搭載スマホの発売が決定、実機の最新デモはこんな感じ(GIGAZINE:2013年2月25日)
- Firefox fail: Layoffs kill Mozilla's push beyond the browser(CNET:2017年2月2日)