ハリー・ポッター作者J.K.ローリング氏の革命的電子書籍販売サイトPottermore

なかなかに普及が進むように見えない電子書籍は アップル社のiPadが全く新ジャンルの製品としては画期的な売上を上げ、 アマゾンのKindle(キンドル)も高い人気を誇ることを思えば、 その原因は需要側ではなく供給側にあると言えるのかも知れません。

此の状況下、画期的な電子書籍販売サイトを立ち上げたのは 出版社ではなく一作家でした。 ハリー・ポッターシリーズで知られるJ.K.ローリング氏です。 その氏が立ち上げたサイトが Pottermore です。

このことを背景など説明を加えつつ詳細に伝えてくれるのがITmediaのeBook User2012年05月28日のコラム 出版社はPottermoreモデルを採用できるか です。 コラムでは電子書籍配信を業務とする各社が ハリーポッターシリーズの電子書籍化の取扱いを切望するのを 長い間ずっと拒否してきたローリング氏が 遂に自ら電子書籍配信をすべく立ち上げたサイトこそ Pottermore であるとのことです。

この電子書籍販売サイトを画期的と呼ぶ理由は以下2つあります。

  1. 大手WebサイトからPottermoreのサイトへの誘導
  2. DRMフリーを採用

前者に言う大手Webサイトとは、 以下列挙する処などが挙げられるでしょう。

  • Amazon
  • Barnes & Noble
  • Kobo
  • Sony

例えば日本でこれが行われれば紀伊国屋書店が運営する Book Web[追記1] なども相当するでしょう。 従来の作家が自ら運営すWebサイトから大手サイトへ誘導し 顧客に売買して貰う手法とは逆を行っていることになります。

もう一つ、後者がDRMフリーです。 DRMとは Digital Rights Management の略でデジタル著作権管理を表します。 著作権保護には大凡が暗号化が利用されているのですが、 Pottermoreではこれをフリー、即ち取っ払ってしまった訳です。

現在の電子書籍販売の標準的な仕組みは暗号化を内包するために 鍵の仕組みが必須となりその認証など敷居は決して低いものではありません。 これに類似したパソコンに於けるソフトウェアの仕組みは返って正規ユーザーに不便を強いることすらあります。 そこでPottermoreではDRMに頼ることを止めてしまったのでした。

ただ無制限にコピーフリーとした訳でもありません。 電子書籍に購入者の個人情報の一部を電子透かしとして埋め込むことで 野放図に拡散されることに歯止めを掛けているのです。 コラムでは大手もこの後者の如き手法を取ってDRM除去に孰れは動かざるを得ないだろうとしています。

以上2点に於いて画期的サイトとして構築されたPottermoreでは驚くことに 開設月に500万ドル以上、即ち約4億円もの売上を計上して今尚その勢いが衰える気配はないそうです。

記事は稀代の人気小説ハリーポッター作者だからこそなし得た施策と主張します。 確かにハリーポッター作者という稀有な人気作家であったことが大きかったと思われます。 なんとなれば大手サイトと対等以上に付き合うことは電子書籍化を断わっても なお要請される程のコンテンツを有しているからですし、 初月から数億円もの売上を上げることは勿論売れるコンテンツが必須です。 ハリーポッターと言う化け物のようなキラーコンテンツを以て初めてなし得る業でしょう。

JK Rowling unveils Pottermore website (2011/06/23)

特筆すべきはコラムでは背負うものの大きい出版社が この方向に舵を切ることは困難を極め、従って難しく、 返って弱小出版社の中に何処かしら成功モデルが出る可能性の高さを指摘してます。 ならば更には作家個人がなし得る蓋然性は更に高いのではないでしょうか? 若しかしたら日本でもPottermoreに続くサイトは一作家個人に構築される事例が先鞭を付けるのかも知れません。

追記 1(2019年4月7日)

2019年4月7日現在、当該アドレスは紀伊國屋書店 Web Store にリダイレクト処理されますが、Book WebはProを冠して 紀伊國屋書店 BookWeb Pro となり、研究者、図書館、法人向けのオンラインストアとなっています。

スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする