サザエさんの波平お父さん銅像の1本毛植毛はもったいないと思う訳

桜新町駅は東京は世田谷区の東急田園都市線の駅で 瀟洒な町並みも優れたその駅前に国民的アニメ サザエさん一家の銅像が立っています。

この銅像はサザエさん作者の長谷川町子さんの住居があったことに因み 今年2012年3月に作品誕生65周年を祝い立てられていたものですが、 サザエさんのお父さん 波平 さんのトレードマークでもある頭頂部の1本毛が 5月7日に1回、20日に1回、と一月に2回も 何者かによって抜き取られる事態が発生したことはかたむき通信2012年5月22日の記事 「世田谷区サザエさん銅像の波平さんのたった1本の髪の毛が2度も抜かれる」[K1] に伝えた処です。

孰れそのままにはしておけませんから、 1本毛の植毛式が昨日2012年6月1日に行われました。 多くの方が集まりなかなか盛大であったそうで集う方々は有名人を中心に口々に もう抜かないで とメディアに訴えたと伝えられます。

更には高硬度ワイヤ製の1本毛を以前のものより強力な接着剤で深く捻じ込んだ、 とのことですが、さぞや波平さんは今頃赤くなった頭をさすっているのではないでしょうか。

ところでです、 この基本的に抜かれないための方向を目指すのは勿体無いのではないか、 というのが本記事の趣意であります。

なんとなればそこに毛が1本あれば抜いてみたくなるのが人情ではないかと思われるからです。 いえいえ、決して抜くことを肯定するものでは有りません。 皆さんが大事にしているものを愉快犯的に奪い去るのが良かろう筈がありません。

しかしその是非を抜きにして目の前に毛が1本生えている、 この状態は謂わば怪我の痕の瘡蓋みたいなもの、 剥がしてはいけないと分かっていつつも剥がしたい衝動を抑えられない、 という人間の深い部分の心の動きを見てみたいのであります。 人は海の向こうに島を見れば渡るものです。

これを理性で互いに抑え合って初めて人間社会は円滑に営ませしめられるのですから 皆さんに抜かないでと訴えるのは実に高尚な社会的前提に基づいているものであります。 しかし敢えてこれを真反対の抜かれるを前提としてみたら如何相成りましょう?

人々は気軽に波平さんの貴重な1本毛を抜いて良くなりました。 勿論一旦抜いたら毛というものは直ぐに生えるものではありません。 前の人が抜いた後には暫く波平さんにはつるつるで我慢して貰わなければいけません。 しかし孰れまた貴重な1本毛はニョキニョキと生えて来ます。 そして運の良い方がまたプチッと持ち帰ることが出来ることになります。

そうなればなかなか貴重な1本毛となりますから 手に入れた方は大した果報者となります。 そして孰れ波平さんの銅像は1本毛を求める人が参集するパワースポットとなる次第。

毛がニョキっと生えるカラクリは羽田辺りの小さくても腕の良い工場の大将にお願いします。 代金は波平さんの脇に備えた賽銭箱で賄う寸法です。

本記事が下衆な思考実験となっていましたら申し訳ないことです。 桜新町に出掛けるに運が良ければお土産に波平さんの貴重な1本毛を持ち帰れるとなったら 知己には鼻高高ですし、さぞかし楽しかろうと不図した妄想の顛末でした。

追記(2022年6月14日)

以て本記事に「お土産化」構想とも言うべき妄想を齎した波平さんの貴重な一本毛が、 又候またぞろ抜き取られた第一報は、 2022年6月6日お昼過ぎに日テレのニュースで齎されました。 続いて関西テレビも翌々日の6月8日の放送で当該事件を報じました。 事件の発覚したのは2022年6月3日朝と言うことで、 桜新町商店街振興組合の羽山敬理事に仍れば、今回で少なくとも6回目となるそうです。 其の初回はかたむき通信2012年5月22日の記事[K1] に配信した処の10年前、2012年5月7日でしょう。 此の際には2週間後の5月20日にも、もう1回抜き取られていますから、 2022年6月2日迄に於いて更に3回程、波平さんは抜かれた毛の後が赤くなったのを擦りながら苦笑いしていた勘定になります。 銅像が設置されたのは作品誕生65周年を祝う2012年3月[K1] ですから初回は其の翌々月に発生しており、設置されて10年で少なくとも6回は、 波平さんは頭頂部への失礼な攻撃の被害を蒙っているのでした。 更には今回、波平さんの末っ子ワカメちゃんのアホ毛3本も同様の憂き目に遭ったと伝えられます。 此れには流石の波平さんも苦笑いでは済ませられないでしょう。

8,000円と言うヘアケアにしては比較的安価で復元は成るとは言うものの、 弁護士ドットコムニュースの2022年6月9日の記事[※1] に依れば当該行為は全くの犯罪と捉えられ、刑法261条の「器物損壊罪」に当たるとの見解が示されており、 かたむき通信にも誉められるべき行為ではないとしてきはしましたが、しかしです、 勿論、当該行為を犯した張本人こそ責められるべきではありますが、 誤解を恐れず言えば最早此れは犯罪の誘発を招いている状況とも言えます。

初回、第二回の事件惹起の際には本記事にも記した通り、 復元の為の1本毛の植毛式が2012年6月1日に賑々しくも多くの参集者の中で催されましたが、 去年2021年にも当該事件は発生しており、桜新町商店街商店街が依頼した既に作業にも慣れた地元業者の手に仍り、 其の時は一転、ひっそりと植毛を施したそうです。 今回も此の如くテレビ局にも取り上げられる程ですから、 当該事件はニュースバリューがあるのが示され、 しかし其れは桜新町商店街商店街に取っては芳しからぬ状況とも言えるでしょう、 何となれば、犯行者の動機の強化にも繋がるからで、 従ってこそ商店街は密かに植毛を施すのでした。

此処迄来ると一般の方さえ其処に毛の生えているのを見れば、 悪意無く持ち帰りたくなる気持ちの抑えられない証明にもなるでしょう。 従って一般の其の様な気持ちを抱く人々は理性で以て其の衝動を抑えているのであって、 其れ等善男善女の善意に頼り銅像は知らん顔をして設置されていると言えなくも有りません。 愈々手前味噌ながらの本記事に示した「お土産化」妄想は具現化されるべきと思わされてならないのでした。

さて、父娘おやこ両者の 一本毛及びアホ毛は2022年6月8日の午後迄には植毛され復元なったそうで、 東急田園都市線桜新町駅々前を行き交う人々は再び或る衝動に駆られる事態が招かれました。 願わくば、「お土産化」妄想の実現されんことを。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 世田谷区サザエさん銅像の波平さんのたった1本の髪の毛が2度も抜かれる(2012年5月22日)
参考URL(※)
  1. またしても抜かれた「波平」の髪の毛、法的責任は?(弁護士ドットコムニュース:2022年6月9日)
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