ルネサス社7月3日発表のリストラ策が巻き起こす波紋

経営困難に陥っている窮地に手を差し伸べて貰うべく 2012年7月3日に予定されていた通りに ルネサスエレクトロニクス株式会社 がリストラ策を公表しました。

かたむき通信2012年7月3日の記事 ルネサス社2012年7月3日発表予定リストラ策推測報道まとめ に報道陣などの予想リストラ策をまとめましたが これが実際のものとして前身母体3社である三菱、日立、NEC及び金融機関に提示されたのです。

ルネサス社には自社サイトに於いても同日 強靱な収益構造の構築に向けた諸施策の方向性について なるプレスリリースのページを設え、概要が記され、 同時に詳細がPDFファイル 目指す事業構造に向けて~強靭な収益構造の構築~ として用意されています。

プレスリリースに依ればそのリストラ策の根本たる経営方針は

  • 海外市場および自動車・スマート社会分野への集中
  • 強靭な収益構造の構築
の2点、後者に於いての具体的施策は以下の如くされています。

  1. 国内生産拠点の再編
    1. 前工程:9拠点15ライン
      1. 生産負荷に応じた適正体格で運営を継続
        • 那珂事業所(8/12インチ)
        • 甲府事業所(8インチ)
        • 滋賀工場(ルネサス関西:8インチ/GaAs)
        • 西条事業所(8インチ)
        • 川尻工場(ルネサス九州・山口:8インチ)
      2. 生産能力を縮小、適正体格で運営を継続
        • 高崎事業所(6インチ)
        • 滋賀工場(ルネサス関西:6インチ)
        • 高知事業所(6インチ)
      3. 生産能力を縮小し、運営。但し、事業計画に従い譲渡または集約を検討
        • 鶴岡工場(ルネサス山形:5/12インチ)
        • 山口工場(ルネサス九州・山口:6インチ)
        • 甲府事業所(6インチ):集約予定
        • 高崎事業所(5インチ):集約予定
      4. 津軽工場(6インチ)は7月1日付けで富士電機殿に譲渡済み
    2. 後工程:9拠点
      1. 生産負荷に応じた適正体格で運営を継続
        • 米沢工場(北セミ)
      2. 生産負荷に応じた適正体格で運営を継続 但し、将来においては譲渡も検討
        • 大分工場(ルネサス九州・山口)
        • 熊本(大津)工場(九セミ)
      3. 生産能力を縮小し、運営。但し、事業計画に従い譲渡または集約を検討
        • 函館工場(北セミ)
        • 青森工場(ルネサスハイコンポーネンツ)
        • 福井工場(ルネサス関西)
        • 柳井工場(柳セミ)
        • 山口工場(ルネサス九州・山口)
        • 熊本(錦)工場(ルネサス九州・山口)
  2. 人的合理化施策
    • 早期退職優遇制度の実施
      1. 対象者:当社および国内連結子会社社員
      2. 募集期間:2012年9月18日から9月26日の間
      3. 退職日:2012年10月31日
      4. 優遇措置
        • 通常の退職金に特別加算金を加算して支給
        • 希望者に対し、外部の就職支援会社による再就職支援を実施
    • 募集人員の上限等に特に定めはないが、5千数百名の応募を想定
    • 拠点閉鎖、統合に拠る人員削減と早期退職と合わせた規模は 全従業員の約1/4に当たる1万人を上回る見通し

以上がルネサス社の提示したリストラ策で、 これに依り経営体制のスリム化、年間430億円の人件費削減が見込め、 財務体質の強化が図れる内容とはなっていますが、 この実現には詳細にも謳われるように退職者への特別加算金及び 工場閉鎖の設備処理費用などで多額の特別損失が生じます。 従って支援が欠かせないのですが、 その前身母体として或る程度責任が有るとは言え支援側が策定された経営方針、特に 海外市場および自動車・スマート社会分野への集中 に納得出来るかが問題です。

この最も重要な将来に向けての経営方針を語るとき、 ルネサス社に取っては耳に痛いだろう記事が配信されていました。 JBPressに2012年7月3日に配信された湯之上隆氏文責の記事 雑誌のせいにされた日本半導体の凋落SoCへ舵を切ったのは実は間違っていなかった です。 先ず氏が同志社大学に籍を置いていた頃、 2007年当時のルネサス社幹部の痛々しい様子が赤裸々に語られています。 DRAM事業への愛着は兎も角、 SoCSystem on a Chip :1つの半導体チップ上にプロセッサやメモリなど必要とされる一連の機能を集積した半導体集積回路) への反感は相当なものですし、 その感情に基く判断は今となってはどの口が 支援獲得の為の新経営方針を策定したのか、と思えるもので、 流石に実名は挙げられていません。

湯之上氏が更に当時のエピソードを綴り、 そして日の丸半導体勢に取っては致命的な欠点に言及します。 それは 自己決定能力がない という一事です。

湯之上氏が記事内に挙げるデータに於いてはどう見ても 半導体市場は一時的な増減の波はあるものの総じて常に右肩上がりであることは間違いありません。 良く考えて見ればこの情報化社会となってコンピュータ化が進む世の中では それは当たり前のことです。 処が日の丸半導体勢の様子を見ていると 半導体市場自体がシュリンクしているかのような錯覚を起こしてしまいます。 実はこの右肩上がりの状況下、日の丸半導体が凋落するのは 実に異常な事態と考えるべきなのかも知れません。

湯之上氏はその知見を踏まえた上で一重にルネサス社の復興は 自己決定能力を持つことにかかっている として記事を結んでいます。 今回のリストラ策に果たして氏にはそれが見えているでしょうか。

そしてルネサス社の発表したリストラ策は 拠点展開される工場の位置する地方の雇用を脅かすものでもあるのも致し方ない処です。 閉鎖の予定される拠点では相次いで地元自治体などの悲鳴にも近い反応が報道機関を通して聞かれます。 7月5日に一挙の報じられた記事へのリンクを以下に列挙します。

数百人規模の雇用が一気に失われるのですから 恐らく閉鎖、縮小の公表された工場の地元では何処も同様の不安を抱くことでしょう。 お察し申し上げます。

こと此処に至れば実に大企業の経営者の責任は重大で、 なればこそかたむき通信に2012年7月4日配信した記事 稲盛和夫氏主導JALの奇跡のV字回復再上場とLCCスカイマークの挑発的サービスコンセプト に見える最後の名経営者 稲盛和夫 氏のJAL再生を引き受けた第一の理由、 5万人の雇用の確保 の重みが知れようと言うものです。

追記 (2012年7月17日)
ルネサス社の苦境から広がるばかりの波紋は遂にNEC社に及びます。 ルネサスがNECを道連れにしかねない模様 を配信しました。

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