タッチパネルに於ける静電容量方式と電磁誘導方式の違い~ワコムCintiqとGalaxy Note

タッチパネルは去年2011年が元年と言われるスマートフォンの普及に依って 一気に身近なものとなりました。 それ迄は銀行のATMなどの機器や一部ゲーム機などが最も身近なタッチパネルであったでしょう、 スマートフォンの普及で常に携帯するものとなりました。

そのタッチパネルには幾つか方式があり、Wikipedia タッチパネルを参照すればそれは以下のように分類されるでしょう。

  1. 抵抗膜方式
  2. 表面弾性波方式
  3. 赤外線方式
  4. 電磁誘導方式
  5. 静電容量方式

これ迄銀行やゲームを通して接して来たタッチパネルは 1番や2番の所謂 感圧方式 としてまとめられるものでした。 主にコストからの要請でしたがこの方式は精度が得られないのが難点です。

スマートフォンで脚光を浴びたのが5番目の 静電容量方式 です。 タッチパネルの方式を説明するページは株式会社ナナオのプランド EIZOサイトとして用意されるITmedia流液晶ディスプレイ講座 IIの 第8回 なぜ画面に直接触って操作できるのか?――「タッチパネル」の基礎知識 分かり易く、其処に静電容量方式の説明として以下引用の様にされています。

画面に指で触れると発生する微弱な電流、 つまり静電容量(電荷)の変化をセンサーで感知し、タッチした位置を把握する。 指を画面に近づけると、人体の静電容量にセンサーが反応するため、 画面に接触する寸前でポインターを動かすような操作も可能だ。

スマートフォンの代表たるiPhoneで有名になった方式と言って好いでしょうね。 続くアップル社のヒット商品iPadなどでも採用され、 追い掛ける他者がAndroidスマートフォンやタブレットに挙って採用しました。

さて此処に些か変り種のタッチパネル方式があります。 4番目の 電磁誘導方式 です。 実はこの方式、コンピュータ上でグラフィックを扱う方にはお馴染みの方式なのでした。 EIZOページには以下引用のように説明されます。

 そもそもディスプレイを搭載しないペンタブレットの入力方式だが、 センサー部を液晶パネルに統合し、高精度のタッチパネルを実現している。 磁界を発生する専用ペンで画面をタッチすることで、 パネル側のセンサーが電磁エネルギーを受け取り、位置を検出する仕組みだ。

 入力には専用ペンを使うため、指や汎用のペンで入力できず、用途は限られるが、 周辺環境の影響や不意に画面を触ってしまうことでの誤動作はないため、一長一短ではある。 ペンタブレット向けの技術なので、 ペンの筆圧(静電容量)を細かく検知して線の太さを滑らかに変えるなど、 検出精度は優秀だ。画面の透過率や耐久性も高い。

その特徴は何と言っても高精度にあるでしょう。 また静電容量方式と異なり専用の入力デバイスを必要としはしますが、 思わぬ部分がパネルに触れ思わぬ作動が招かれはしません。 其の上入力デバイスの工夫で筆圧検知が可能となっています。 これだけ見ても例えばコンピュータ画面上でイラストを描画する際には 打って付けの方式であるのがはっきりします。

この方式をコアコンピタンス、即ち競争力の源泉とする企業が 株式会社ワコム です。

コンピュータを使ってイラストを描くなどする方には 実に同社が馴染みがあるというのも同社のタブレット型ペン入力デバイスが作業に欠かせないからです。 同社サイトの Q&A (2019年2月28日現在記事削除確認) に依ればそのシェアは2010年BCN調べで国内で85.7%、 世界では当社推定で凡そ85%と寡占とも言える高いものであることでも その馴染み深さは分かろうというものです。

電磁誘導方式については同社サイトにこれも Q&A (2019年2月28日現在記事削除確認) が用意されています。 その説明によればこの電磁誘導方式を電池レス・コードレスでタブレットに於いて実現したのは ワコム社が世界初ということで、この他社の追随を許さない先行技術で ほぼ独擅場とも言える地歩を築くことになりました。 以下にその仕組みの説明を引用します。

タブレット(板面)の表面に作った磁界(電磁)の中を電子ペンが動くと ペンに内蔵されたコイルに電気が流れます。 次に、その電気を用いてペンの作る誘導信号をタブレットが受信します(誘導)。 このプロセスを高速で繰り返すことにより、滑らかなペンの軌跡がタブレットに読み取られる仕組みです。 また電子ペンは、筆圧、傾き、回転などを検知する機能により、 線の強弱や色の濃淡を表現できるほか、消しゴム機能を用いることで 描画の修正が簡単にできるのも大きな特長です。

ワコム社のこのペンタブレットが発売されてこそ コンピュータ上に絵を描けるのが可能となったと言って過言ではないでしょう。 それ迄は意に沿わないマウスの入力に苛々させられていた PCドローイングがワコム社のタブレットの登場で それはもう劇的に改善されました。 それ以来変わらず感覚的な要求に五月蝿い 世界のグラフィックアーティスト達に製品が愛用されているのは ワコム社のこの電磁誘導方式が精度の高い入力方式として その性能を保証されているのだとも言えます。

そのワコム社が 高性能プロフェッショナルグラフィックス用液晶ペンタブレット として提供していた製品が Cintiqシンティック でした。

従来ワコム社の製品ではタブレット入力デバイスは入力部分と 出力部分であるモニターが分断されていました。 慣れれば何と言うこともなかったのですが、 直感的な操作から一つ退いていたのも確かです。 しかしユーザーからの要請も高かったのでしょう、 入力部分に液晶パネルを用いて入出力を一体化し 更に直感的なものとしたシンティックが登場し、 世のグラフィッカーから熱烈に歓迎されたのでした。

それにしても同社の製品は読み方に難があります。 Intuos もそうでした。 Cintiqも チンテック で充分だと思いますし従来そう呼んでいたのですが、 今回この記事をものするに当たり同社サイトのソースを見れば確り シンティック と記述されているのでした。 そう呼ばれたいんだったらローマ字ばかりでホームページを飾らないで 確りカタカナで記述しておくのは基本ですね。 此処はワコム社に苦言を呈したい処です。

閑話休題、そのCintiqに新製品が登場の報が齎されました。

新発売されるのは現在発売中のCintiq 24HDの上位機種となる Wacom Cintiq24HD touch とCintiq 21UXの後継機種となる Wacom Cintiq22HD です。

特に Cintiq24HD touch は電磁誘導方式に加え静電結合方式のマルチタッチジェスチャー入力にも対応したとのことで 正しく本記事にぴったりの性能は両方式が併用出来るものであるのを教えてくれます。 またこの最上位機種は14bitルックアップテーブル、AdobeRGBカバー率97%の色再現性、 ハードウェアキャリブレーション機能にも対応し、 グラフィックに関して従来他モニターの協力を得なければならなかった色の正確な確認に関しても これ1台で賄えるようになったプロ御用達の製品となっています。

この新製品のニュースについては以下列挙する処などの記事に取り上げられています。

価格はオープン価格ですがアマゾンでは2012年7月15日現在、 Cintiq24HD touch には298,152円(2019年2月28日現在、278,000円)、 Cintiq22HD には179,955円が予価として設定されており、発売日は2012年7月26日が予定されています (2019年2月28日現在、モデルは代替わりして Wacom Cintiq Pro 24 TDTK-2420/K0 となって価格は、294,089円となっています)。

このワコム社の電磁誘導方式のタッチパネルは 唯に同社製品として発売されるだけではありません。 高精細な入力が必要な場面に様々利用され世に提供されています。 そのひとつがかたむき通信2012年7月10日の記事 密かに人気のドコモGalaxy Noteは更にデカくなるか? にも取り上げたSamsung社の Galaxy Note(SC-05D) です。

この記事内にはスタパ斉藤さんの言として従来の静電容量方式のスマートフォンの感覚とは ワコム社の feel IT technologies を採用した Galaxy Note(SC-05D) のデジタルペンの入力は別モノだとされています。 正しく別次元、それはプロのグラフィッカーをも満足させる秘密は 電磁誘導方式にこそ有ったのでした。

なればこそお笑い芸人の鉄拳さんもSamsung社とのコラボレーションに応じられた訳です。 NTTドコモのスマートフォン Galaxy Note(SC-05D) は従ってプロの絵描きには実にお薦めのスマートフォンなのです。

追記(2012年7月24日)

Galaxy Note 2アナウンスの情報を受け 新Galaxy Note正式発表近し! を配信しました。

追記(2012年8月7日)

Glaxy Note 10.1発売発表を受け Galaxy Note 10.1~発表から半年に渡るスペック変遷 を配信しました。

追記(2019年2月28日)

本記事配信より既に7年を閲すれば、其の間にはワコムのCintiqも15.6インチ画面の新モデルが2016年11月16日に定価168,000円で発売され(当時型番DTH-1620/K0)、 初期の4K表示問題を解決すべく改良型変換アダプタ付属した Wacom Cintiq Pro 16(DTH-1620/AK0) が2018年5月に提供され、其の価格はアマゾンでは現在、158,236円となっています。 唯、記事に列挙紹介した通り、Cintiq、特にProを冠するモデルは多少値が張る様に感じられるのをワコム社も承知しているだろう処に、 iPadでタブレット市場に揺るぎない地位を確立しているアップル社が、 Appleペンシル を以てワコムの市場を侵食せんとの姿勢が示されたのですから黙ってはいられないでしょう、 ワコム社は今年2018年冒頭エントリーモデルとした割安の Wacom Cintiq 16(DTK1660K0D) を発表、1月11日からは一般販売され、アマゾンでも取り扱う処の価格は一月半過ぎた2019年2月28日現在、69,300円とされています。 勿論、其の採用する方式はワコム言う処の EMRElectro Magnetic Resonance)テクノロジー、即ち 電磁誘導方式となっており、Appleペンシルが充電の必要があるのに対し、Cintiqでは引き続き其の必要はありません。

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