億万長者14人輩出ファナック製品はギター制作者にも高いブランド力で不景気下でも絶好調

一般には有名ではないけれど、 世界に冠たるものとしてしばしば取り上げられる 知る人ぞ知る企業が日本には幾つも在ります。 その内の一つにコンピュータコントロールで 旋盤やルーターなどの正確な機械作業を熟す CNCマシン で世界トップシェアを保持する ファナック株式会社 があります。 ファナック社の製品は工場運営には欠かせないものです。

エレクトリックギターが工場で制作される際には NCマシンが重要な役割を持って来ます。 ネックとボディのジョイントを筆頭に製造工程を考えれば 有る程度の精度が必要になってくるからです。 その必要な精度は0.1mmと木工業ではなかなか見られない要求です。 従ってギターを製作する工房などでは木工と言っても 大工さんなどよりは指物師の世界に近くなります。 こうなってくるとNCマシンの担う役割が大きくならざるを得ません。

NCマシンはそれでもなかなかの高価なものですから 設備投資としてそれなりの額を要求されます。 ファナック製のNCマシンも矢張り高額ですから そこを狙って安価な木工用NCマシンを出して来る新興企業もありました。 しかし矢張り実際にその安価な機会を使用してみると様々不満が出て来ます。 その時に必ず代替品に出来ることならとして名前が出るのは静岡県浜松市の ショーダ(庄田鉄工株式会社)、 ヘーアン(株式会社平安コーポレーション)の両社、 そして山梨県忍野村のファナックなのでした。

中にもファナックは一段と高いブランド力を持っています。 それもあってか今年は何と企業内から億万長者を一気に14人も輩出したそうです。 2012年7月20日のYahooニュースに 億万長者が14人もいる「日本一の会社」は山梨県のロボットメーカー (2019年7月26日現在記事削除確認)と伝えられる処です。

上場企業に於いてその経営の透明性を図るための 年1億円以上の役員報酬を公開されればならない開示制度があります。 これに基づき東京商工リサーチが自社サイト内で データを読む と言うコーナーに2012年7月9日、 2012年3月期決算(全上場企業)「役員報酬1億円以上開示企業」調査 ~ 役員報酬1億円以上 172社 295人 ~ を配信しています。 ここに掲載される法人別人数に於いて ファナック社が14人を数え堂々トップにランキングしているのです。

順位企業名人数
1ファナック(株)14
2大塚ホールディングス(株)10
3日産自動車(株)6
4三菱商事(株)6
5三井物産(株)5
5住友商事(株)5
5ソフトバンク(株)5
5伊藤忠商事(株)5
9エイベックスGR.HD(株)4
9信越化学工業(株)4

ファナック社取締役社長稲葉善治氏も役員報酬ランキングで 前年13位から9位と一躍トップ10入りを果たしています。 この開示制度によって赤字、無配でも 役員報酬に1億円を支払っている企業の存在が浮き彫りになりますが、 無論ファナック社は圧倒的な好業績を上げています。

2009年にはビジネスメディア誠で1月30日に 利益率44.83%、最強のBtoB企業「ファナック」の秘密を分析する と題する記事でファナックの競争優位性と経済的パフォーマンスを、 以下列挙する処の条項からなる 4つの問い で検討、その優良企業の秘密を垣間見せてくれます。

  1. 経済価値(value)
  2. 希少性(rarity)
  3. 模倣困難性(imitability)
  4. 組織(organization)

そして今期もファナック社はこの分析、及び圧倒的な技術力と、 ギター製作のような木工業者からも憧憬の目で見られるブランド力で以て 過去最高益の見通しなのだそうです。

追記(2015年4月28日)

本記事に億万長者輩出を伝えてから程なく3年を経る ファナック株式会社 は変わらぬ好調を維持し続ける処か遂に内部留保は1兆円に迫って 大概の内憂外患にも耐え得るだろうとして株主還元を決めました。[※1・2] 具体的には自社株買い、自己株式の消却、配当性向を2倍とする60%への引き上げの3点が発表されています。[※3] 当該方針の策定について2015年4月28日本日、稲葉善治社長が投資家向け説明会に先立ち実施したメディア取材を元にした記事[※4] が詳しくありますが、グローバル企業たるファナックについて更に好調の説明を求めれば海外の記事[※5] の購買しなくとも読める冒頭だけでも興味深くあるのは 其処にiPhone及びテスラ自動車製造に用いられるとあるからです。

アップル社などの勃興で凋落を余儀なくされたとする本邦電機業界とは裏腹に iPhone製造は日本製の工作機械あってこそ供給の可能になる商品であり それでこそのファナック社の絶え間ない好調振りがあるのでした。 アップル社から鳴り物入りで登場した Apple Watch とて同様でしょうしまた既存の縄張りを奪われてなるものかと競合すべき高級機械式腕時計業界に於いても 例えば Hublotウブロ など裏で其の精度を支えるのは日本製の工作機械であり[K1] もすれば電機業界の落ち込みばかりを見て日本企業危うしと唱えてばかりいるのも胡乱です。

FANUC Robot Assembly Demo - The yellow robot arms dance through an assembly demo for Elon Musk and the rest of the tour group that visited the reopening of the former NUMMI plant, now Tesla Motors. photo credit by Steve Jurvetson
FANUC Robot Assembly Demo - The yellow robot arms dance through an assembly demo for Elon Musk and the rest of the tour group that visited the reopening of the former NUMMI plant, now Tesla Motors. photo credit by Steve Jurvetson

日本電機業界はともあれ日本製自動車こそ未だ世界を牽引する立場にあるものの 来たるべき電気自動車、自律自動車の時代に備え業界内外で鍔迫り合いが続き帰趨に予断を許さぬ中、 新興自動車メーカー及び電気自動車の旗手として名を成す テスラ自動車(Tesla Motors) のカリスマ経営者 Elon Muskイーロン・マスク 氏が右の2010年の写真にある如く熱い視線を送る其の先のファナック社のロボットがまるで本記事本追加分文章と今の時代を象徴しているようです。

使用写真
  1. FANUC Robot Assembly Demo - The yellow robot arms dance through an assembly demo for Elon Musk and the rest of the tour group that visited the reopening of the former NUMMI plant, now Tesla Motors.( photo credit: Steve Jurvetson via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. ウブロの腕時計の精度を影ながら支える静岡県の加工機械とビバー氏の為人(2013年7月20日)
参考URL(※)
  1. 今日の株式見通し=反発後もみ合い、ファナック株主還元は刺激材料に(Reuters:2015年4月28日)
  2. 日本株上昇、配当還元ファナック高い-決算受け自動車部品も(Bloomberg:2015年4月28日:2019年7月26日現在記事削除確認)
  3. 株主還元方針について(PDF)(ファナック株式会社:決算発表資料等:2015年4月27日)
  4. ファナック、株主還元「最大80%」のナゼ(日経ビジネスオンライン:2015年4月28日:2019年7月26日現在記事削除確認)
  5. Japanese Robot Maker Fanuc to Double Dividend(WSJ:2015年4月28日)
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