腕時計界にガガミラノは定番と成るか一時の流行に終わるか

腕時計に於いて1970年代クォーツショックが襲うも、 機械式腕時計が不死鳥のように復活、 クォーツムーブメントの本家セイコーに於いても機械式腕時計に今尚注力するのは 只に時刻の正確さのみを知らせるだけに留まらない腕時計の位置付けを思わせます。 古くから宝飾との関係も深い腕時計は身に着けるものとして、 即ちアクセサリーとして、ファッション性や所有満足を齎すものでなければなりませんでした。

腕時計界に於いては時を刻む時計としての心臓部とも言えるムーブメントから最終製品パッケージ迄、 一貫して自社製作可能な工房を マニュファクチュール と称します。 またムーブメントなど必要なパーツを他社から調達して最終製品に組み立てる工房を エタブリスール と称します。 エタブリスールに於いては従ってそれぞれに付加価値を以て 製品を世に問う必要があるのでした。 この付加価値をファッション性、デザイン性に負う工房も自ずと現れます。 近年、この分野で名を馳せているのが GAGAMILANOガガミラノ なるブランドです。

ガガミラノ(GAGAMILANO)サイトスクリーンショット
2012年日本GAGAMILANOガガミラノサイトスクリーンショット

ガガミラノは日本に於いては著名人の所有に依って知名度を増して来た感が有ります。 先ずはスポーツ選手にも特にサッカー選手が目立ち、 格闘技や芸能人にも徐々にそのユーザーが増えて来ました。 彼等、彼女等が身に着けることで一般ユーザーにも訴求する機会が弥増したようです。 正しくファッションアイテムとして世間に流通し始めたのでした。 GAGAガガ とはダンディを表すミラネーゼに独特の言い回しなのだそうでこのコンセプトの元に命名され、 2004年ミラノの街に腕時計ブランドとしてGAGAMILANOは誕生したのでした。

その世に送り出す腕時計の特徴はまるで見た目が 昔懐かしい懐中時計にバンドを装着したかのような概観です。 所謂レトロと言うのでしょうか。 これがダイヤルにデザインされた大きめでキッチュなインデックスの 如何にもイタリアを感じさせる原色的、モダンアート的な色合いと相俟って 不可思議な魅力を放っているのが一代特徴となって、 ファッションに八釜しい人々にも納得の雰囲気を醸し出しているのでしょう。

さてこのガガミラノ、ファッションアイテムとしては一定の地位を得た感がありますが、 こと腕時計として見た際には些か覚束ない地歩であるのは否めません。 それと言うのも腕時計ファンからの支援の声が余り聞こえて来ないからです。 ガガミラノに関する2012年11月時点での評価を追ってみると ファッションアイテムとしては相当の評判を取っており、 販売店にも多く扱われるようになっていますが、 腕時計として多く扱われる印象がないようなのです。 腕時計が腕時計たるためには矢張り斯界の関係者に認められる言が欲しいものです。 この方面の評価が得られれば恐らくは 単なるファッションアイテムから抜け出るのが可能となるでしょう。

腕時計が腕時計たるのは矢張りその基本性能である時刻情報の正確性が問われます。 そのためには心臓部であるムーブメントが重要なのは無論です。 腕時計ファンにはムーブメントの型番たるキャリバー情報が重要視される所以です。 然るにこのムーブメントが何者であるか、 ガガミラノの製品には明示されません。 商品の詳細情報にもムーブメント欄には、 手巻き、であるとか、クォーツ、であるとかその大まかな方式が記されるのみで、 詳細としてのマニュファクチュール情報やキャリバー番号は見当たりません。 それを知るには蓋を開け、中身の刻印を見る専門的な知識が要されてしまうのです。 従って腕時計のファンには今の処、敬遠されるアイテムとなるのかも知れません。

ガガミラノのムーブメントの情報を追ってみても なかなかに芳しいものの得られないのも立場を難しくするでしょう。 その多くは中国製のものとする情報が多く見受けられます。 一昔前に比較して中国製にも良品は出回るようになりましたが、 それでも日本製、スイス製の一級品に比べれば見劣りは如何ともし難く 更にはガガミラノに使用されているものは 中国製の中にも下位ランクのものが搭載されていると巷間言われています。

イタリア製と言われるムーブメントも生産は中国で刻印のみイタリアで施されるとも言われます。 ETAなどのムーブメントを搭載するとも言われますが、 そうとなればスイス製を謳うだろう処、その様子も見えません。 店舗に依ってはムーブメントを問うと シチズン 製だと応答があった情報もありますが、 公式なものではなく、一部シチズン子会社の ミヨタ 製だとの情報もあり、となれば正確性はシチズンブランドより劣るものの その真偽の程は定かではありません。 更には実際にムーブメントを分解して見た処、 なかなかに正確性を保つには難しい構造であったと言う指摘も見受けられるようです。 この様に様々な憶測を交えた情報が出回る状況は好ましいものとは言えません。

GAGA MILANOの日本正規総代理店である GAGA JAPAN に商品の値段を見れば凡そ15万円を下る値付けにはあらず廉価とは些か言い難いものです。 値段を鑑みた際時計としての正確性が若し此れより廉い腕時計に大幅に劣るものであれば 購入者の満足は先ずは得られないものでしょう。

かたむき通信にもルイ・ヴィトンを扱ったように[K1] 何も古くはブレゲ、新しくはセイコーのように腕時計の仕組みに画期を齎し貢献を成さずとも アクセサリーとして評価を得た後、其れを土台に 腕時計ブランドとして確固たるのは珍しい話でもないでしょう。 ルイ・ヴィトンは腕時計界への参入は2002年と新参ながらも 今や自社ムーブメントを有する立派なマニュファクチュールでもあるのでした。 ルイ・ヴィトンの如き老舗としてのブランド力を持たない創業初期には 著名人に頼り露出を図るのは販促として極く々々一般的な手法でもあります。

しかし現状を鑑みると此の侭では一時的な流行に留まる懸念も生じます。 ユーザーとしては結構な出費を以て数年後に無駄となるのは避けたい処でもあるでしょう。 現行ユーザーの失望を招かぬよう単なる流行り物との謗りを受けぬために体勢を固めるには 先ずは搭載ムーブメントの公表から始め、腕時計ファンの支持を得て 腕時計たる地歩を築くのが肝要だと思われます。

かたむき通信参照記事(K)
  1. ルイヴィトン~トランク職人発祥ファッションブランドは自社製ムーブメントを携える腕時計マニュファクチュール(2012年4月10日)
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする