日本直販インターネット対応後手に回り業績低迷~総通が民事再生法適用申請

株式会社 総通 と聞くと何やらピンと来ませんが、 高枝切鋏たかえだきりばさみ日本直販 となれば膝を打つ向きも多いでしょう。 TVショッピングでお馴染みですね。 この日本通販を運営しているのが総通なのですが、 大阪地裁へ本日2012年11月9日に残念ながら民事再生法の適用を申請し、 同日中に保全命令を受けたことが明らかとなりました。 その負債総額は帝国データバンクには174億円[※1] 、東京商工リサーチには175億円[※2] と知らされます。

創業は1961年5月ですから半世紀を経た老舗でもあります。 前身は東洋ペン学会として通信教育を主業務として事業開始、 1967年にはペン習字講座事業を開始するなど徐々に講座数を拡大しました。 1972年に法人化した際の屋号が 総合通信教育センター です。 同年に通信販売業に参入しておりそれこそが TVショッピングの日本直販 だったのです。 此処に知名度は全国区に広がり、 TVショッピング業界のパイオニアとして先行者利益もあり業績は鰻上りとなりました。

そして1985年に 株式会社総通 に社名を改称したのです。 それからも全国のテレビ局127局だけでなく、ラジオは勿論 新聞社52社、出版100社などCMや広告を掲載するなど 他メディアにも通信販売を展開し 新聞に於いては通販業界のみならず全国トップクラスの出稿量となり、 1995年9月期には年売上高約525億円[※2] 1997年9月期には年商約410億円[※1] を計上する迄になっていました。

商品アイテムは身近な生活雑貨から、衣・食・住迄、生活全般、 加えてスポーツ用品に娯楽用品、美術工芸品など実に幅広いものでした。 また他社製品を売るだけでなく自社で企画したオリジナル商品にも注力し 多くのヒット商品を送り出してもいました。 これ等多様な商品を扱うために現在は 以下に列挙する屋号を以て 日本直販グループ は構成されています。

2012年民事再生法適用申請時の日本直販webサイトのスクリーンショット
2012年民事再生法適用申請時の日本直販webサイトのスクリーンショット
  • 日本直販(生活用品全般)
  • 日本直販レコードクラブ(音楽・映像ソフト)
  • 日本直販アートクラブ(美術・工芸品)
  • 日本直販ゴルフクラブ (ゴルフ用品)
  • 日本直販フーズ(食品)

屋号の総通の通は通信販売ではなく通信教育を意味するようですが、 顧客と遠隔地に通信を以て接するノウハウは同様のものだったのでしょうか。 しかしこのノウハウは従来メディア時代に通用するもので インターネット時代となっては勝手が大いに違ったようです。 かたむき通信にもしばしば取り上げるネットショップ大手アマゾンは日本でもお馴染みとなりましたし、 日本を代表するネットモールの楽天も有ります。 これ等は家電量販店さえ押し遣る勢い[K1] が有ります。 この影響は日本通販グループにも実に大きかったようです。 通信を屋号に入れながらネット展開に後手を取ったのは如何にも失策でした。

更にはご他聞に漏れずリーマンショック以降の不況もあり、 東日本大震災でTVCMが自粛されたのは記憶に新しい処でしょう、 TVショッピング売上低迷の要因が胚胎するのは必然です。

弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂とは良く言ったもので此処に デリバティブ取引 の魔の手が忍び寄りました。 かたむき通信にはエスケー食品倒産の際の記事[K2] に記したのと同様に、 若しかしたら何某か売上の落ち込みを補填するべく 金融機関からの働き掛けがあったのかも知れません。

勿論のことインターネット通販にも進出を図りますが TVショッピングの時とは異なり、今回は後発でもあり上手くことは運ばなかったようです。 2009年9月期には年商は約280億円と言いますから 干支一回りで130億円、更に2年加えれば245億円と言う 屋台骨を揺るがす減収の憂き目を見たのです。

遂には今年2012年6月には架空在庫や利益の水増しなどの粉飾決算が発覚してしまい、 80億円を超える債務超過に転落となっては今回の仕儀も致し方のない処となりました。 冒頭に記した如く法的整理に依る再建を目指すものとされたのです。

本日2012年11月9日の時点では通販業務は継続する方向で スポンサーと目されるアウトソーシングサービスを主業務とする トランスコスモス株式会社 と協議、基本合意書が締結されたとも伝えられますが、 具体的にどのような形態になるのかは未だ明確にはなっていません。

追記(2019年8月7日)

本記事配信時から一箇月と十日を経た2012年12月19日には、 株式会社総通とトランスコスモス株式会社の間には通信販売事業、 即ち日本直販事業の事業譲渡契約が締結されました。 翌年2013年には大阪地裁より1月22日付けで事業譲渡に関する許可決定が発令され、 翌日23日に事業譲り受けが完了して、新たに 日本直販株式会社 がトランスコスモス株式会社傘下として通信販売事業を営む業態が出来[※3] しました。 其の後、2015年5月にはトランスコスモス株式会社は日本直販株式会社を吸収合併[※4・5] し、日本直販は通販ブランドとして其の名前を今に残しています。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 曲がり角の家電量販店~YKK戦争も今は昔、忍び寄るネットの影(2012年9月27日)
  2. ギャートルズ肉のエスケー食品を追い込んだデリバティブ取引(為替予約契約)と金融機関の責任(2012年6月11日)
参考URL(※)
  1. 『日本直販』 で知られるテレビショッピング業者 株式会社総通 民事再生法の適用を申請 負債174億円(帝国データバンク:2012年11月9日:2019年8月7日現在記事削除確認)
  2. (株)総通[大阪] 通信販売 民事再生法申請 / 負債総額 約175億円(東京商工リサーチ:2012年11月9日)
  3. 通信販売事業(日本直販事業)譲り受け完了に関するお知らせ(トランスコスモス株式会社:2013年1月23日:PDFファイル54KB)
  4. 連結子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ(トランスコスモス株式会社:2015年3月18日:PDFファイル102KB)
  5. 日本直販、トランス・コスモスが吸収合併へ(RBB TODAY:2015年3月19日)
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