奇しくも本記事に紹介する雑誌の付録の綴じ込み冊子は BASELWORLD 2012 SPECIAL REPORT と題されるその惹句に現在の世界的な不況下にも高級腕時計市場が活況を呈している旨、 伝えられるように、腕時計関連雑誌は書肆の書棚を占拠する面積の日増しに拡大する感があります。 POWER Watch vol.64 (以下、本書)は既に中にも今年2012年6月号に64号を数えるそんな雑誌群の一冊で 腕時計ファン初心者にも優しい内容となっています。
本書に先ず目の留まるのは矢張り力の入った特集となるでしょう。 18頁から22頁に渡る 高級腕時計ウンチク講座 がそれで、この薀蓄を身に着ければ尚時計選びも楽しくなると言う寸法です。
その内容は著名人が愛した時計編、エポックメイキングな時計編など 7編で構成されており、中にも冒頭の ロレックス編 は力の入った濃いものとなっています。
門外漢とて知らぬ者の無い彼の高名な
ロレックスの3大発明とは即ち以下に列挙するもので、 ロレックスオーナー必須の薀蓄とされています。
- デイトジャスト(1945年発表)
- オイスターケース(1926年頃完成)
- パーペチュアル機構(1931年頃完成)
デイトジャスト とはその名の通り午前零時を以て瞬時にカレンダーの日付が切り替わる機能で1945年に発表された Ref.4467 に世界で初めて搭載されました。 今では当たり前のこの機能もロレックスの創始で小窓式の日付表示を 一般化させたのも正しくこの功績でした。 この小窓が3時方向に設けられたのは左腕に装着するのが一般の腕時計に於いては 袖口から最初に見える要素として考えられた位置だったと言います。
オイスターケース は金属塊から削り出しで作られるケースで 此れを以て防水性能は飛躍的に高められロレックスの堅牢性は世界に知らしめられました。 そして パーペチュアル とは所謂自動巻き機構で此れが如何に画期的であったかは 今や余りにも当たり前になってしまった為に返って分かり難いくらいのものです。 それ迄は機械式時計の動力を得る為にはゼンマイを手巻きで巻く必要があったのでした。
薀蓄特集は29頁の よろず雑学メモ からも一つご紹介です。 インデックスは何故12から始まるのか? なる疑問に答えるもので、人類史上ゼロの概念が普及し始めたのは8世紀とされ、 当時機械式こそ存在しないが日時計など時計概念は確固たるもので 同時にインデックスは12から始めるものとして定着していた為、 時計のインデックスは12から始まるとしています。 これなど腕時計に関心の無い集まりの飲み会の席などでも使えるかも知れませんね。
最後にもう一つ薀蓄特集から紹介するのは30頁に見開きで用意された こだわりのクォリティ認定編 です。 其処には以下の腕時計認定規格が紹介されています。
クロノメーター認定、カリテ・フルリエ[K1] 及びグランドセイコー規格[K2] はかたむき通信にも取り扱い馴染み深い処です。
そして腕時計ファン初心者には嬉しい連載物
ビギナーのための腕時計購入基礎知識
の第3回として
シンプルカレンダー
が取り扱われ、その黎明期、
量産型ポインターデイトを1938年に発売した
日回し車とフィンガーなど仕組みが解説された上で 何故一般に言われる21時から3時の間にカレンダー操作をしてはいけないか、 が説明されていますので納得し易い情報です。 なるべく故障を避ける意味でも当該時間に日付調整は避けるべきなのだと 自分に言い聞かせるのは勿論、人に説明する際にも役に立つでしょう。
もう一つ初心者に優しいコーナーを紹介しておきましょう。
これも連載物で78頁の
今更聞けない腕時計雑学講座
の第12回は
有名な時計師は本当に創業者なの?謎の多い時計メーカーの表看板(其の2)
なる題目で
トゥールビヨン、ひげゼンマイ(ブレゲひげ)、近代的耐震装置(パラシュート)など
多くの画期的発明をなし時計の歴史を2世紀早めたと賞賛される偉大な創業者
最後に紹介するのは冒頭に惹句を引用した付録の綴じ込み冊子の
- スイス製高級腕時計ボベ(ボヴェ:BOVET)その変遷とブランドを守る秘密(2012年4月6日)
- グランドセイコーに4本目の針を携えてメカニカルGMT10周年(2012年10月29日)
- 高級腕時計ゼニスのムーブメント~エルプリメロの危機と復活(2012年3月21日)