スマートウォッチ勢の大攻勢〜LG G Watch R、Samsung Gear S、そしてiWatch

図らずもスマートウォッチに起因するSwatch社の憂鬱を伝える記事をかたむき通信に配信[K1] した翌日は昨日2014年8月28日はスマートウォッチ勢が一挙に攻勢を掛けるが如くまるで示し合わせたように まさかの3巨頭のほぼ同時発表、報道にて俄かにスマートウォッチ陣営の大いに活気付いた一日となりました。 其の3巨頭とは LG 社であり、 サムスン 社であり、そして アップル 社です。 既存の腕時計界にとっては正しくスマートウォッチショック・Xデーとも後に伝えられる一日になったかも知れません。

韓国の両雄の内先ずは LGエレクトロニクス が発表したスマートウォッチが G Watch R です。 以下関連記事を列挙しましょう。 孰れも昨日2014年8月28日に配信された記事になります。

其の特徴の筆頭には何と言っても円形ケースが挙げられるでしょう。 Swatchの憂鬱[K1] で代表のニック・ハイエック氏が現状のスマートウォッチにはエレガントさが掛けると揶揄したのを皆迄言うなと制するが如く 伝統的な腕時計のデザインを模し、満を持して発表された感があります。 関連して言えば先々月6月にはシャープ社が虎の子のIGZO技術[K2] を応用して円形液晶ディスプレイをも可能にする フリーフォームディスプレイ を発表[※1] したばかりでした。 ウェアラブルコンピュータの代表たるスマートウォッチの大きな可能性が関連技術の発達を促進せしめ 液晶の形状の常識をも打ち破り始めている状況に既存の腕時計界も震撼せざるを得ないでしょう。 スマートウォッチがニック・ハイエック氏の言うエレガントを身に纏う日も遠くなく、 其の先鞭をLG社のG Watch Rが告げているのかも知れません。

列挙した処の記事からはG Watch Rはコンピュータ性能も従来に比して高く、 512MBのメモリーと4GBのストレージと記憶性能も揮っており、 Androidが基本ソフトウェアに採用されているのが読み取れます。 防水、防塵仕様にてバッテリーは410mAhのかなりの容量が搭載されています。 また基本ソフトウェアはLG社の先行機種 G Watch と同じく Android Wear が採用されているのも注目に値するでしょう。 正式な公開はドイツはベルリンに来月9月5日から開催される世界的エレクトロニクス展示会である IFA2014 であるとされており、発売は今年2014年第4四半期を予定しているとのことです。

此のLG社に申し合わせた様に同日、サムスンからも従来に比して特徴的なスマートフォンが発表されました。 Gear S です。 G Watch Rと同じく以下に関連記事を列挙しましょう。 孰れも昨日2014年8月28日に配信された記事になります。

上のG Watch Rに対比して言えば技術がデザイン的影響を生ぜしめた湾曲型液晶ディスプレイが挙げられますが、 テレビモニターなどでも既にお馴染みの仕様であれば多少インパクトには欠ける印象もあります。 Gear Sに挙げられるべき特徴はしかし目に見えるものにあらぬ処にこそあり、 其れこそモデム内蔵に依る単体でのネット接続を可能足らしめる機能にありました。 従来、スマートウォッチはウェアラブルとしての極小性から搭載機能からバッテリー性能に至る迄制限が多く、 接続に於いては手元のスマートフォンとの連携に留まっているのが通常でした。 果たしてウェアラブルコンピュータとしての成り立ちを考えたとき 他ガジェットに依存して始めて成立する仕様が存在理由を大きく毀損せしめると考えられるに齟齬があるでしょうか。 而して単体でのネット接続がGear Sに挙げられるべき特徴の筆頭であるとして宜しいかと考えられるのです。

そして興味深くも目に見えぬ特徴がもう一つあります。 其れは基本ソフトウェアへの Tizen の採用です。 従来スマートウォッチと言えば基本ソフトウェアにはAndroidが採用されるのが通常でした。 Tizenは未だ採用実績の無い基本ソフトウェアで例えば本邦NTTドコモ社がiPhoneを扱えない頃に採用を決める[K3] ものの以降2013年7月3日には其の開発がプロジェクト毎キャンセルされ既に死に体であるとの 関係者Eldar Murtazin氏のツイートが様々なオンライン媒体に取り上げられ話題となるなど、開発自体の迷走もあり[K4] 遂には今月24日に Huaweiファーウェイ社CEOがウォールストリートジャーナルのインタビューに答え 中国の大手携帯通信機器端末メーカーである同社では基本ソフトウェアとしての採用は全くなく 其の成功は金輪際あり得ないと迄発言する[※2] など開発肝煎りのサムスン社に取っては鬼っ子にも近い存在になりつつあったように思います。 以下は2013年7月3日のEldar Murtazin氏の当該ツイートです。

Eldar Murtazin (@eldarmurtazin) 2013, 7月 3 via Twitter

Gear Sは未発売でもありロシアに於いてTizen搭載スマートフォン Samsung Z の発売を延期する前科[※3] も持てば必ずしも確定事項ではありませんが特筆すべき仕様として挙げざるを得ないでしょう。

LG社とサムスン社の此の同日に於ける全く性向の異なるスマートウォッチの発表は各方面に衝撃も与え 以下に挙げる様な対比記事等もネット上には配信されました。

そして愈々大本命であるアップル社の新ウェアラブルコンピュータ iWatch 登場の噂が立ち昇り始めました。 アップル社が来月9月9日にイベントを開催し其の際既定路線の iPhone6 の発表と共に噂され続けかたむき通信にも多くの記事を配信したスマートウォッチ iWatchを発表するのではないかと実しやかに囁かれ、 TechCrunch[※4] 等を始め多くのオンラインメディアの報じる処となっており、 Swatchの憂鬱[K1] で伝えた如く最も影響の大きいと懸念される大本命が遂に登場するかも知れない様相の出来に 既存腕時計界の関係者は如何なる心境下に置かれているかが容易に忖度されます。

故スティーブ・ジョブズ氏と共にアップル社を設立した Steveスティーブ・ Wozniakウォズニアック 氏はアップル社がスマートウォッチ事業に踏み出すのは動かし難く 極小画面等解決されるべき問題を挙げながらも 嘗て2007年iPhoneで与えた如き衝撃が再び巻き起こるであろうと予言します。[※5] 他社がスマートウォッチを発表するに挙ってiPhoneとの連携を謳うのは周知、 此れが本尊のアップル社謹製と成れば其の連携の緊密さは今回同時に新しく発表されるであろう iOS8 と言う基本ソフトウェアレベルで達成されるに違いありません。 其れだけを以ても若しiWatchの登場があれば小さな衝撃であろう筈はありません。

スマートウォッチ勢の大攻勢は既存腕時計界に大いなる憂鬱を齎すと共に 提供側の当のスマートウォッチ勢にも当惑を齎しているとする記事[※6] も本日配信されました。 技術革新は絶え間なく、新技術、新発想を携えた新興企業の参入も後を絶えない様相を呈しているからで、 嘗ての成功を縁に呑気に構えていれば瞬く間の凋落は免れ得ないと言う訳です。 但し此れはユーザーに取っては望むべき状況でもあるでしょう。 スマートウォッチに興味を抱く向きには果報は寝て待てとばかりに楽しみな時期が続きます。

かたむき通信参照記事(K)
  1. SWATCHの憂鬱~スマートウォッチショック(2014年8月27日)
  2. シャープ虎の子技術IGZOとは何か?復習してみる(2012年12月27日)
  3. NTTドコモの思い切ったTizen(タイゼン)の採用は吉か?凶か?(2012年12月30日)
  4. Tizenがチグハグ施策迷走ドコモの象徴となる断ち切れぬ負の連鎖(2013年7月5日)
参考URL(※)
  1. シャープ、円形液晶も実現可能な「フリーフォームディスプレイ」開発。IGZO応用。ウェアラブルにも(AV Watch:2014年6月18日)
  2. Huawei Is Shaking Up the Smartphone Market(WSJ:2014年8月24日:2020年4月15日現在記事削除確認)
  3. Samsung、初の商用Tizenスマホ「Samsung Z」のロシア発売を延期(ITpro:2014年7月29日:2020年4月15日現在ITProから日経XTechへの記事移行確認)
  4. Apple May Reveal A Wearable Alongside New iPhones In September(TechCrunch:2014年8月28日)
  5. Apple co-founder Woz calls wearables 'a hard sell,' wants bigger screen(CNET:2014年8月27日)
  6. Prepare For The Smartwatch Assault(TechCrunch:2014年8月29日)
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