再生可能エネルギー活用の世界的高まりと日本に於ける制度的コスト高問題

世界共通に認識されるエネルギー問題に於いては 再生エネルギーの位置付けが高まっています。 現在主力の化石エネルギーの利用には埋蔵量の限度と恒常的な環境問題があり、 また原子力発電はその隠されたコストが異様に高いことから それ等に変わるものとして再生エネルギーが脚光を浴びています。

脚光を浴びると共に国家は予算を投じ 民間の参入が相次ぎ研究成果と競合からコストも漸次低減しつつあるのは 日本国内からの空気感からも読み取れる処です。 これについてデータで裏付けられるのはWIRED日本版の2012年7月12日の記事 世界各国で再生エネルギーが急増:米国では原発を上回る に見られます。

  • Global Investments in Green Energy Up Nearly a Third to US$211 billion(Bloomberg社New Energy Financeグループ:2019年8月13日現在記事削除確認)
  • 米国内エネルギー経済調査6月分(米国エネルギー情報局)

上記に記した処の2つの報告書で、 これ等から再生エネルギーの投資増大と価格低下が読み取れるとされています。

Solar power plant Steindorf (3D Viz) photo credit by Pure3d
Solar power plant Steindorf (3D Viz) photo credit by Pure3d

さて世界的に再生エネルギーのコスト低下が図られ利用しやすくなっている中、 日本に於いては些か障壁を抱え込んでいるのが顕著になって来ました。 有態に言えば再生エネルギー、特に太陽光発電に於いて コスト低下が図られながら発電された電力を利用する時点では 利用者は相変わらず高コスト体制化にあった当時と同額の負担を負わねばならない点です。 このコストは丸々売電事業者の懐を肥やすのに当てられます。

これを指摘するのは誰あろう、時の経済財政担当相古川元久大臣です。 大臣が本日2012年7月27日に閣議に提出した 平成24年度 年次経済財政報告 に於いては様々は経済上の報告がなされますが、 其の中、第3節には 持続的成長への課題 が用意され、この第3項が 電力供給制約の克服 とされた中に指摘されます。 特に焦点となるのは 3(PDF形式:447KB) でしょう。

このPDFファイル内に 買取が増えれば増えるだけ、利用者負担も増加 と題されたのを見るだけ再生エネルギー発電のコスト負担構造が一目瞭然の段には、 高収益率が制度的に保証されているに因ってこの一年で 発電設備規模が前年比40.2%増と驚くべき伸びとなるのも合理的とするように、 明らかに余剰電力買取制度の設定は事業者育成にありました。

此処に於いて流石成長著しいソフトバンクの総帥は鼻が利きますから この余剰電力買取制度に於いて思わぬ高値で買取がなされているのを見て これは儲け放題ではないかと直ぐ様気付いたでしょう。 太陽光発電売電事業を新業務として検討を即刻開始したのでした。 そして余剰電力買取制度がそのまま再生エネルギー買取制度に反映されれば 太陽光発電売電事業は金のなる木となりますし、 それは世論の再生エネルギーへの後押しもあって 政治的な障壁も特になく簡単に乗り越え ほぼそのままの買取値で設定されたのは思惑以上だったでしょう。 此処に批判の集まる処ですし、かたむき通信には2012年6月26日の記事 再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始と太陽光発電を取り巻く思惑 にて魑魅魍魎の跋扈す、とした処です。 以下に年次経済財政報告から第1-3-30表の 再生可能エネルギーの固定価格買取制度 を引用します。

 買取単価
(円/kWh)
建設費
(万円)
運転維持費
(千円)
買取期間
(年)
サーチャージ単価
(円/kWh)
太陽光4232.5~46.64.7~1010~200.22
※全国一律
風力23.1~57.7530~125620
地熱27.3~4279~12333~4815
中小水力25.2~35.780~1009.5~7520
バイオマス13.65~40.9531~39222~18420

確かにこの売電事業者に有利な買取価格の高値設定は 新規事業者参入を促し事業者育成に与って力となりますが、 孰れ近い将来必ずや見直されなければなりません。 かたむき通信に2012年7月26日、 躍進する日本太陽光発電~ソフトバンクに強力なライバル出現 なる記事で公正な競争が起き、それに依ってコスト削減策も進み、 再生可能エネルギーの固定買取価格制度に於ける買取価格及び期間等 が利用者の視点に立って上で見直されるべきとした処です。

何処ぞの政党は国民への嘘は付き慣れているでしょうが、 この見直し時には政権与党にはないでしょうから、 当該時の政権与党には事業者側にも寄り過ぎない、利用者側にも寄り過ぎない バランスの取れた調整力を期待したいものです。 即ち競合の末充分な商売としての成り立つ処で公正な価格に引き下げられなければなりませんが、 その末には公共料金であることを踏まえつつも 孰れ或る程度の自由競争価格も含んだ上での施策が必要とされます。

追記(2018年10月5日)

朝日新聞の2018年10月4日の記事 太陽光買い取り見直し検討 未稼働は認定取り消しや減額 及び一箇月にも満たない内の列島を跨ぐ大規模停電の発生を受け、 本かたむき通信2013年1月23日の記事 太陽光発電再生可能エネルギーの固定価格買取制度の買取価格引き下げ に追記しました。

追記(2019年7月25日)

今年、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に於いて顕在化する 2019年問題 について各電力会社の1kW時当たりの 卒FIT 買取単価が明らかになって来ましたので、本ブログの2013年1月23日の記事 太陽光発電再生可能エネルギーの固定価格買取制度の買取価格引き下げ に一覧表にして追記しました。

使用写真
  1. Solar power plant Steindorf (3D Viz)( photo credit: Pure3d via Flickr cc
スポンサー
スポンサー

この記事をシェアする