太陽光発電再生可能エネルギーの固定価格買取制度の買取価格引き下げ

再生可能エネルギーの固定価格買取制度 が施行されたのは去年2012年7月1日[K1] でした。 この事前の摺り合わせ段階から既に多方面より懸念の表明されていたのがその買取価格でした。 営利企業としてはその参入時[K2] に採算を考えるのが当然ですし、 多額が動く状態となるため其々の思惑が蠢く[K3] のは致し方有りません。 特に太陽光発電についてその動きは激しいものとなっていました。

再生可能エネルギーには太陽光の他にも、風力、地熱、中小水力、バイオマス、など各種あり それぞれにその買取価格は異なっています。 その中にも太陽光発電の買取価格は高めに設定されました。 売電事業者に有利なこの高値設定は思惑通り多くの新規事業者参入を促し[K4] ました。 これが消費者価格を押し上げるのは無論で様々影響の多大な面から 近い将来必ずや見直されなければならない、とかたむき通信にもした処[K5] です。

静岡県浜松市伊左地町の太陽光発電所に整然と並ぶ太陽光発電パネル(2017年5月21日撮影)
静岡県浜松市伊左地町の太陽光発電所に整然と並ぶ太陽光発電パネル(2017年5月21日撮影)

この法律の運用後半年経って新年も明けた2013年1月の半ば過ぎ、 日経新聞が19日にこの買取価格について言及する記事が配信[※1]されました。 以下に該当部分を引用します。

急拡大している太陽光発電に対し小幅に下げる案もあるが、 世界的にみて高めの価格を日本が維持するのは確実だ。

しかし此処にそのニュースソースと示唆されるかの如く 調達価格等算定委員会 の名が有り、それは茂木敏充経産相の諮問委員会である訳ですが、 それにも関わらずその2日後には茂木大臣自らが此れを引っ繰り返す発言を為し、 多くのメディアが昨日2013年1月22日に伝える処となったのは、 日経の勇み足であったのかも知れません。 他メディアの昨日の記事を以下に列挙しましょう。

太陽光発電に於いて法制化されたその固定買取価格の単価はkWhあたり42円[K4] となっていました。 これが30円台後半と出来るのではないか、との言及が茂木大臣から直接発せられたのです。 経済産業省としては太陽光発電の買い取り価格を引き下げる方針をほぼ固めているようで その価格は恐らく37円前後に落ち着くのではないかと言われています。

引き下げを行政側から要請する根拠としては主には 太陽光発電の設備設置の際の費用の下落があります。 太陽光パネルは普及拡大に依るスケールメリットから値が下がり それは供給側として7割ものシェアを占める中国企業が過剰供給したため値崩れに近いもので、 制度開始時点から凡そ1割程の費用低減が見られるのでした。

他の買取価格は据え置かれ太陽光発電に限られはしても、 而して想定より早い買取価格引下げとなるのを見れば エネルギー問題が世間からも行政からも関心の高いことが伺えます。

しかし既に参入済みの売電事業者にはこの買取価格は適用されないともされています。 従ってこの買取価格値下げは新規参入を抑制する方向に働くもので、 既参入事業者は相変わらず20年間もの間、この高値が適用されたままとなり、 これが電気料金について消費者価格を押し上げる一因となるのは間違い有りません。

今回、僅か半年経過後に太陽光発電についてのみ買取価格が見直されたのは 矢張り初期設定に問題があったのが否めないことが証明されたとも言えるでしょう。 批判の有る中ゴリ押しのような印象も伴う形で導入された当該法規の影響を鑑み 今後今回の不具合を糧として適正な法制化が望まれますし、 出来得れば20年間と言う長期の固定買取価格の見直しも望まれる処となるでしょう。

追記(2018年10月5日)

需給バランスや社会情勢から鑑みて当然ながら制度発足から直ぐ様引き下げられた 固定価格買取制度の買取価格 は当時減額されても本記事にあるように30円台後半でしたが、2018年10月現在では 18円 と更に大幅な減額価となっています。 主導官庁の経済産業省の思惑として業者不参入を恐れる余りの当初の決定[K5] が高価過ぎたのは此処に分明となったのですが、 未だ海のものとも山のものともつかない開始前には其の決定は致し方ない面もあったでしょう。 従ってこそ粛々たる制度改定を以て今の買取価が値付けられているのでしたが、 矢張り制度発足時の取り決めには相当な無理があったようで、 参入業者には更なる制限が設けられる、との報道が2018年10月4日に朝日新聞に仍ってなされ[※2] ました。 以下に当該記事から引用します。

導入当初に認定を受けた太陽光発電施設のうち、 いまだに発電を始めていない施設などについて、 認定の取り消しや買い取り価格の減額を含め検討する。 当時の買い取り価格が割高に設定され、 これらの施設がすべて発電を始めれば産業界や家庭への負担が膨らむためだが、 事業者からは反発も予想される。

約束を反故にする面もあって当該業者の反発が予想されてもいますが、 太陽光発電施設構築の低廉化を狙って発電が 先延にされる要素も強く、 高価買取価格の権利だけ保持して義務が期限を設けられていないのを理由に果たされないのには問題も感じられます。 此の権利が発揮されれば消費者負担の増す許りの処、 電力消費者、即ち国民から快哉の得られ、約束反故の大義名分も得られる辺りに目を付けたのは、 なかなかの経産省の慧眼に感じられもします。 但し、事業者引き締めに依る太陽光発電の再生可能エネルギーの生産価格減額の強制許りでは片手落ちにて、 エネルギー生産の効率化の主導も積極的に実践する必要があるでしょう。 然もなければ新規参入の事業者のなくなり、 延いてはエネルギー政策の行き詰まり要因の一つにもなり兼ねません。 北海道胆振東部地震[※3] は今年9月6日にて北海道に大規模停電を齎らし、 10月1日には台風24号[※4] が沖縄県及び静岡県に大規模停電を齎らし後者は今現在も県西部、浜松市近辺に復旧作業の真っ只中にて、 特に天竜区など山間部では倒木で寸断された道路が復旧作業を困難にしている、とも聞き及びます。 僅か一箇月にも満たない内の列島を跨ぐ大規模停電は何をか語るでしょう。

追記(2019年7月25日)

2019年6月12日に共同通信、時事通信が相次いで配信し、当日から翌日に掛けて、 東京新聞、毎日新聞、読売新聞などの契約大手メディア、及び四国新聞、静岡新聞などの地方メディアが盲目的に追随して配信した記事の題目には揃って 「経産省太陽光買い取り終了検討」 の文字が踊り、 太陽光発電に於ける固定価格買い取り制度(FIT:Feed-in Tariff)の終了を経産省が検討開始し、 代替の新制度創設の上、2020年度の法改正を目指す、と言う大凡の内容が流布されたのでした。 処で、当の経産省のwebサイトを見ても当該情報は見えず、 またどの記事にもニュースソースが、当局とも然るべき筋とも関係者とも事情通とも、何も記載が無かった為、静観していました。 2週間程経ても経産省からの正式発表はなく、 プレジデントオンラインでは2019年6月25日付けに真壁昭夫まかべ あきお氏の文責で配信された記事[※5] に固定価格買い取り制度の無理筋を主張する中で枕として 6月12日に上記内容を日本経済新聞が先んじて各紙も追随するものの、今だ経産省からの正式な発表の無い旨、述べられています。

さて、固定価格買い取り制度の終了を待つ迄も無く、今年は 2019年問題 の年に当たります。 当該制度に基づき太陽光発電の余剰電力の促進の為、割高での固定価格での買取開始されたのは2009年11月1日、 2012年7月1日には対象は太陽光発電以外の再生可能エネルギーにも拡げられ、余剰電力買取制から全量買取制に制度が変更されだのでした。 固定価格買い取り制度は最初の10年間は制度に基づく固定価格での自家発電電気買取が行われるのでしたが、 此の制度開始から今年の11月1日には10年が経ち開始当初に参入した売電業者は期間が満了し、当該問題が惹起されるのでした。 住宅用太陽光発電設備の固定価格買取期間終了に向けては其の対応について経済産業省の外局の一つである 資源エネルギー庁 が2018年9月12日付けで資料[※6] を配布しており、中には 卒FIT なる言葉も見え、此れは固定価格買い取り制度期間の満了した太陽光発電電力を意味しており、 此れが如何程で売電出来るのか、固定価格と如何程の差額になるのかが一部からは注視されているのでした。 買取価格は従って国機関ではなく電力買取業者、即ち既存の電力会社が市場動向を元に算定するのでしたが、 満了期日も迫って順次金額情報[※7~14] が齎されるようになって来ましたので、各情報を元に以下に一覧表としてまとめました。

電力買取業者(電力会社)卒FIT買取単価(1kW時当たり)
北海道電力8円+同社顧客1エネモポイント
東北電力9
東京電力8.5
北陸電力8
他、年間定額プラン
中部電力シンプルプラン:7
Amazonギフト券プラン:8.1円
WAONプラン:7円+2WAONポイント
関西電力8円
中国電力7.17
四国電力7
九州電力7
沖縄電力7.5

ともあれ、6月12日に大手メディアの報道記事には出しただけ、放りぱなしの感が有り、 様々鑑みたニュースソースの秘匿の必要性があるにしても、何某かのよすがを提供しなければ、飛ばし記事の疑義を持たれるのも致し方の無い部分も有り、 大手メディアは一度配信した内容ならば其の後の経緯も追い掛け、提供する義務さえ有るかに思うのですが、 其れ以前に一定期間を置けば記事は削除されるのが当たり前になってもおり、此方からリンクを貼るさえも躊躇われ、 メディアとしての存在価値も毀損されれば、頃日の既存メディアの凋落を見れば望ましくもない状況が招かれるものでしょう。 然もなければ当該省庁の社会的思考実験として様子見のトリガーとしてのリーク行為に使嗾される走狗の感さえ抱かれるものにて、 孰れにせよ猛省を促したくもあります。

かたむき通信参照記事(K)
  1. 7月1日うるう秒挿入の本日2012年後半の開始日はレバ刺し禁止、固定価格買取制度、コンプガチャ規制などの施行日(2012年6月30日)
  2. ローソン、上組、GSユアサなど売電参入続々~7月1日再生エネルギーの固定価格買い取り制度開始(2012年6月30日)
  3. 再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始と太陽光発電を取り巻く思惑(2012年6月26日)
  4. 再生可能エネルギー活用の世界的高まりと日本に於ける制度的コスト高問題(2012年7月27日)
  5. 原発を代替する再生可能エネルギーに遠からず浮上する問題 (2012年8月14日)
参考URL(※)
  1. 再生エネ買い取り、価格維持で普及後押し 13年度(日本経済新聞:2013年1月19日)
  2. 太陽光買い取り見直し検討 未稼働は認定取り消しや減額(朝日新聞デジタル:2018年10月4日)
  3. 災害・防災情報:平成30年北海道胆振東部地震(国土交通省)
  4. 平成30年台風第24号による高潮(気象庁報道発表資料)
  5. 金持ちだけが得した"太陽光バブル"のツケ(プレジデントオンライン:6月25日)
  6. 住宅用太陽光発電設備のFIT買取期間終了に向けた対応(資源エネルギー庁:2018年9月12日)
  7. 中部電力、「卒FIT」太陽光の買取単価を公表、「ポイント」上乗せも(日経xTECHクロステック:2019年4月25日)
  8. 固定価格買取制度に基づく買取期間満了後の買取について(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)(北陸電力株式会社:2019年4月26日)
  9. 東北電力、「卒FIT」向け買取単価を公表、首都圏の顧客も対象(日経xTECHクロステック:2019年6月1日)
  10. 沖縄電力、卒FIT電気の2019年度買取価格は7.5円/kWhに(環境ビジネスオンライン:2019年6月5日)
  11. FIT制度の買取期間が満了する太陽光発電の買取プランを決定しました -2019年11月以降の買取期間満了後も引き続き購入します-(九州電力:2019年6月6日)
  12. 2019年、家庭用太陽光発電の「卒FIT」が始まるNews Socraニュース ソクラ:2019年6月11日)
  13. 北海道電力、卒FIT電気の買取金額は8円/kWh ポイントで+1円も(環境ビジネスオンライン:2019年6月28日)
  14. 東京電力が卒FIT太陽光の買取価格を公表、電気の「預かり」プランも(スマートジャパン:2019年7月2日)
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