アップル社によるマイクロソフト社時価総額世界一記録の更新を見る

時価総額ばかりを追い求める姿勢に疑義を発したばかりのかたむき通信[K1] ですが、企業の発展を以て結果的に時価総額が世界一となったのではあれば それは次元の異なる話しでもありましょう。 Apple2でパーソナルコンピュータ市場を創出し、 Macでパソコンの操作体系を根本から変え、 iPhoneで携帯電話市場を一変せしめたアップル社が 長年記録を保持していたマイクロソフト社を抜き、 遂にその時価総額を史上最高[※1] に至らしめました。 その時価総額は6235億ドル、2012年8月21日現在日本円に換算して 49兆4,370億円と言う巨額となります。

記録を破られたマイクロソフト社が最高値を付けたのは 折りしもITバブル真っ盛りの1999年、 その時価総額は6208億ドル、2012年8月21日現在の日本円に換算すれば 49兆2,230億円[※2] でした。 マイクロソフト社の記録は米労働統計局のインフレ計算機に基づけば インフレ調整後の時価総額は8537億ドルとなる計算だそうですので バブルの勢いたるや凄まじいものを感じさせますが、 IT業界も不況にそれほど芳しい業績を示せない中、 アップル社が絶対額にしろマイクロソフト社の記録を更新したのは特筆に価するでしょう。 並み居る石油メジャーを抑えて マイクロソフト社の後をアップル社が継ぐのも興味深い事象と言えます。

実際、日本に於いて電機メーカーを見渡せば ソニー、パナソニック、シャープ、NECなど多くのトップ企業が赤字の憂き目を見ている[K2] のです。 電機メーカーと並んで日本を支える一角の自動車メーカーは辛うじて乗り切り 好転の様相を呈し始めた不況も、電機メーカーには、或る企業には底の見えないものとなっています。 円高に苦しめられるのは同じ、若しくは自動車メーカーに負担の大きいものの、 自動車メーカーの立ち直りに電機メーカーは一人いつまでも円高の所為にしていては埒が明きません。 時価総額で見た時にはこの不況の開始以来に代表的電機メーカーはその時価総額を 最大で85%も失っている[※3]のでした。 シャープは過去見ない大幅な人員削減が必須で存続の危機に立たされ[K3] NECの株価は100円近辺を烏鷺付き、時価総額どころ[K4] では有りません。 多くの品揃えを有す世界に冠たる日本電機メーカーがこの状態の中に アップル社の時価総額記録塗り替えは厳然としてあるのでした。

またIT業界に目を転じてみれば、先頃IPOを果たしたFacebook社[K5] は其の後芳しい話を聞けない様な状況です。 更には起業当初からの投資家が保有するFacebook株の大半を売却したとの情報[※4] も流れています。 売却時期としてはあり得る時期でもあり予定もされていたものとはされますが、 Facobook株価に取って決して良い条件ではないのは否めません。 次代のIT業界の覇者とも言われるFacebook社にしてこの状況下、 アップル社のこの時期の時価総額記録更新は際立っています。

マイクロソフト社からアップル社に引き継がれた時価総額世界一記録は 正に工業化社会から情報化社会に移行した象徴的な出来事とも取れるでしょう。 時価総額はその大きさを目標とするには値しないものとは考えますが、 世の中を見る指標としては適しているようです。 次の世界一更新者は恐らく電機メーカーでも自動車メーカーでも石油メジャーでもないでしょう。 新たな情報産業の旗手がそれをなし得るのでしょうし、 それはGoogleやFacebook以降に誕生する企業である気が強くするのです。

かたむき通信参照記事(K)
  1. スーパーカブとカップヌードルとWindowsの共通点とiPhone(2012年8月20日)
  2. 有機ELテレビ事業提携交渉~追い詰められたパナソニックとソニー呉越同舟(2012年5月15日)
  3. シャープ残酷物語~免れ得ない大幅人員削減(2012年7月24日)
  4. 株価初の100円割れNEC危機的評価~LaVie Zは復活の尖兵となり得るか(2012年7月21日)
  5. FacebookがGoogle超え上場、時価総額9.1兆円~問われる市場調達資金の使い道(2012年5月19日)
  6. SNSに向けられる厳し過ぎる目の妥当性を考える(2012年7月28日)
参考URL(※)
  1. アップル時価総額、史上最高に--MSの記録を抜く(CNET Japan:2012年8月21日)
  2. アップルの時価総額が史上最高、99年のマイクロソフト上回る(ロイター:2012年8月21日)
  3. [FT]沈む日本の電機、自動車と明暗分けた理由(日経新聞:2012年8月21日)
  4. Facebookの株価低迷が続く中、最初期からの投資家Peter Thielが持株の大部分を売却(TechCrunch:2012年8月21日)
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