平清盛は沈む夕日を呼び戻せず~NHK大河歴代最低視聴率

伝説中には 音戸の瀬戸 に沈む夕日を扇子で仰ぎ上げ 切削工事を一日の内に終わらしめた 平清盛 ですが、今年2012年のNHK大河ドラマの沈む視聴率を引き上げるのは叶わなかったようです。 50年の歴史に及ぶその51作中にも最悪の平均視聴率となるのが確定的となりました。

Ondo no seto / 音戸の瀬戸 photo credit by woinary

NHKの大河ドラマは昭和38年(1963)に開始されそれから今年迄50年間に 51作に及ぶ作品を世に送り出しました。 そのカタログページがNHKのサイトに用意[※1] され、綺羅星の如きドラマが居並びます。 しかし其々が視聴率と言う数字を帯びれば其処に上下の格差が付くのは必定、 歴代トップの数値を叩き出すものもあれば 残念ながら最下位に沈むものも出て来ます。 そして残る放送回を3回残し2012年12月2日放送分迄を集計した時点で その不名誉な最下位記録を塗り替える可能性が高くなったのが今年の大河ドラマ 平清盛 なのでした。

ビデオリサーチが歴代のNHK大河ドラマについて 関東地区に於ける視聴率を公開[※2] しており、その中に見える歴代ワーストは平成6年(1994)4月から12月に放映された 花の乱 の14.1%です。 残る3回の放送に於いて軒並み35%程を確保しなければ 平清盛はこの花の乱以下になってしまうのです。 これは現在まで11.数パーセントで推移して来た平清盛には 無理と言わざるを得ない数字です。 残念ながらほぼ歴代最下位記録を更新することは確実となったのです。

原因については様々言われていますが その取り上げた時代が悪かったと言う意見もある様です。 大河ドラマに於いては視聴率を稼ぐには鉄板の 戦国時代 及び 幕末 でありご存知の通り平清盛は 平安時代 の末期でした。 しかしNHKのカタログページを見れば平安時代のそれに末期に限っても第4作の 源義経 があり、第10作の 新・平家物語 があり、第17作の 草燃える があり、第32作の 炎立つ があり、第44作の 義経 があり今年を併せなくとも5本は1割を占める割合で 評判が取れなければ許されない率でもあるでしょうから、 決して時代設定ばかりが問題ではないような気もします。

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さて平安時代末期の設定の一つである大河ドラマに 草燃える が挙がっておりビデオリサーチデータには最高視聴率は34.7%、 平均視聴率は26.3%と決して抜きん出た数字ではありませんが、 個人的には実に思い入れのある一本です。 大河ドラマは開始より既に半世紀に及び、 人それぞれ生きる年代、歴史や壮大なドラマに興味を持つ年齢も異なりますから 思い入れのある一本も異なるでしょう。 かたむき通信に於いて些か紹介したくもなるその1本が鎌倉時代草創期、 源頼朝と北条政子夫妻を中心とした大河、草燃えるです。 源頼朝についてはかたむき通信に2冊の書評としての3本の記事に扱う[K1-3] ように人生に於ける影響も少なからずあったものと思われます。

歴史物語に興味を開かしめられた鎌倉創世記物語は鮮烈でした。 画面の陰影、登場人物の心理の抑揚、 物語のささやかな展開から大きな転回までの広いダイナミックレンジ、 そして知識欲を満たしてくれる歴史認識の促進、 と見るものの心を揺さぶる出来であったと朧気な記憶が主張します。

役者も秀逸であったように記憶しています。 主役の源頼朝と北条政子を演じるのは 石坂浩二さんと岩下志麻さんは矢張り出色でした。 勿論脇役陣も素晴らしい演技を見せてくれました。 歴史物を見つけると次第に歴史人物の脳内キャスティングが出来上がって来ます。 当然主役のお二人は主役其の儘のキャスティングでインプットされましたし、 北条義時の松平健さんこそ矢張り8代将軍吉宗としてインプットされ、 なかなか思い出せるものではなくなってしまいましたが、 源義経役の国広富之さんは第21作の徳川家康に於ける織田信長役の役所広司さんと並んで 脳内歴史人物キャスティングに不動のものとなっています。 なかなか一つ3つの不動のキャスティングを為したドラマは これ以外に長くなってしまった人生にも見当たりません。 因みに今年のドラマの主役となった平清盛役は この時は金子信雄さんが配役されていました。

草燃えるが放映されたのは昭和54年(1979)でした。 当時は勿論家庭にVTRの普及もない頃でしたが、 そのテープが業務用にも貴重なものとは知りませんでした。 従ってNHKにもその貴重なVTRテープは上書きされてしまって 映像が残っていないと言うのです。 この状況を救ったのが全国の大河ドラマファンでした。 全国から寄せられた家庭で撮られたVTRテープに依って全話が今や見られるものとなった[※3] そうです。 但し未だ画像が不鮮明のものも混じるため引き続き収蔵された保管テープを募集[※4] してもいます。 もし知らず知らず隠れた幻のテープをこの年末の大掃除の際にも発見された向きには 是非にもお申し出の程をNHKに成り代わりお願いしたく思います。

草燃えるは今やCSなどにも見られるそうです。 孰れ時期が来れば個人的に拝見する折もあるでしょう。 その際にはまたかたむき通信に伝えるかも知れません。 もう何年もの間、NHK大河ドラマにはご無沙汰しており 従って平清盛も何ら知るものでは有りませんが、 世の中全体のテレビ離れもあり、 ネットやスマートフォンの普及などに因る社会構造の変化もあり、 NHKと言う国営放送に期待されるものも変わりつつあるでしょう中に、 一つにドラマの出来如何に視聴率低迷を帰して好いものではないようにも思います。 実際熱狂的に大河ドラマを追いながら遂に此処何年もの間 目にしないで過ごしている者が此処にも現存しています。 今は只にドラマ関係者の労を労いたいとも思っています。

使用写真
  1. Ondo no seto / 音戸の瀬戸( photo credit: woinary via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. 源頼朝~安吾史譚書評~顔大短身御曹司が化ける(2012年10月21日)
  2. 鎌倉開府と源頼朝~書評前編~武家政権揺籃期の再確認(2012年10月14日)
  3. 鎌倉開府と源頼朝~書評後編~日本史的画期の武家政権樹立(2012年10月16日)
参考URL(※)
  1. 大河ドラマ 一覧(NHK:大河ドラマ 50)
  2. NHK大河ドラマ(ビデオリサーチ)
  3. 第7回『草燃える』再発見テープ、再生の結果は?(NHKアーカイブス:アーカイブスホームページ連載コラム『お宝発見ニュース』)
  4. 番外編”幻の”大河ドラマ『草燃える』を探しています!(NHKアーカイブス:アーカイブスホームページ連載コラム『お宝発見ニュース』)
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