TASAKI(前田崎真珠)の機械式腕時計参入

田崎真珠を前身とする宝飾品を取り扱う一部上場企業の株式会社TASAKIが 高級腕時計の取り扱いを始めると言う一報[※1] が日本経済新聞に依って齎された今年2014年の明けて間もない1月6日でした。 以下、無料で閲覧可能な部分を引用しましょう。

宝飾品製造販売のTASAKIは高額腕時計市場に参入する。2015年春をめどに1本1千万円超の男性向け腕時計を東京・銀座本店で発売する。東京や大阪などの有力百貨店で順次取り扱いを始め、将来はパリやロンドンなど海外の主力百貨店でも販売する。腕時計を取扱商品のラインアップに加え、宝飾品になじみの薄い男性客ら新たな顧客を取り込む。

日本の技術者に製作を依頼して、ぜんまいで時を刻む機械式の腕時計をムーブメ…

ただ其れから9日経るも未だ公式サイト 株式会社TASAKI にはニュースリリース等の公式発表は見られないようです。

Pearl Shell Monument Doha

最近はかたむき通信にも産経の件を伝えた記事[K1] や東洋経済が批判を浴びる[※2] 如くネットの台頭で従来メディアの飛ばし気味の記事も多ければ、 記事一つをソースにして断定はし兼ねる処です。 但し高級腕時計の話題などと言うものが世間一般に其れ程ニュースバリューのあるものとは思えず、 わざわざ自社の労力を割いて迄飛ばすだろうか、と言う疑義も惹起し、 若しや嗜好性の高い世界の話にあれば余程日経内部に好き者の存在のあっての流れなのかも知れません。

そうは言っても此のニュースを受けて従来と異なる顧客層を取り込む算段のタサキ社の株価は好感触に推移した[※3] などと言う情報も見られ、 高級腕時計業界には相場に影響を及ぼす程のインパクトは持ち備えている様子も窺われるのでした。

宝石たる真珠が貝の中に養殖されるのに子供心に驚かされた漫画の題材、主人公に取り扱われたのを読んだ記憶も今は遠くなりしは、現 ミキモト の祖にして立志伝中の人物である 御木本幸吉 であったかとは脳裏に薄くあれどもさて真珠の世界初の養殖の成功の 1893年(明治26年)から遅れること半世紀余り、 其の3年後の1959年には田崎真珠株式会社と改組する其の前身、田崎真珠商会を1956年設立したのは 此方も本邦真珠王として名を馳せた 株式会社TASAKIの創業者、即ち田崎真珠創業者の 田﨑俊作 氏であり、1970年代には真珠の量産に成功して一代にして田崎真珠を大企業に迄育て上げた其の人でありました。

此の田崎氏も然し其の晩年には田崎真珠の業績も経営権も有り、 なかなかに意の侭には運ばずして苦境にあったのが窺われる記事[※4] もネット上には見られ、2011年4月26日に息を引き取った後、 2011年12月22日に配信された平成24年1月31日迄を旧社名田崎真珠株式会社(TASAKI SHINJU CO, LTD)、 平成24年2月1日より新社名の株式会社TASAKI(TASAKI & Co., Ltd.)とするニュースリリースも 意に染まぬものだったのやも知れません。

斯くあるもTASAKI社の本邦の宝飾品トップメーカーの1社であり、 就中唯一原産国としてある真珠の取り扱いに確固足る地位を占めるのは疑いもありません。

併せて宝飾業界と腕時計業界の結びつきが強いのは謂わずと知れたこと、 機械式腕時計に傾くかたむき通信でも扱った腕時計には宝飾品のイメージも強いピアジェ[K2] のあり、また一般には腕時計の霞む程他商品にブランドイメージの強いルイヴィトン[K3] などもあれば他にも ショパールChopard[K4]ショーメChaumet)、 グッチGucci)に ハリー・ウィンストンHarry Winston[K4]カルティエCartier[K4] と枚挙に暇ありません。

而してTASAKI社が腕時計を、其れも高額のものを、となれば機械式を取り扱うのは少しも不思議ではない訳で、 日経の一報も此の脈絡上に有れば実しやかに現実味を帯びて見えて来るものです。 そう遠からぬ内に実情も明らかになるのでしょうが、 新規事業が創業者田崎俊作氏の意に染むか否かは知らず、 孰れにせよ、腕時計ファンなればTASAKI社の動向には注目せざるを得ないものとなりましょう。

真珠をあしらった機械式腕時計なんぞ 其のブランド力から大いに魅力的なものとなるやも知れず、 なかなかに好奇心を擽られる今回の情報には其の1千万円を超えると言う値付けもあれば機械式ムーブメントは当然の如く組み込まれ、 其れは外注なれども自社製に組み込むとも報じられており楽しみではあれば、、 さて何処が其のムーブメントの製造を担うのかもマニアの耳目を集める処ともなりましょう。

凡そ上記した宝飾品メーカーとしても名のある海外高級腕時計メーカーに於いては ブランドを守る必要性からも品質が等閑にされることは先ずありませんから、 若しTASAKI社が取り扱うことになっても其れ程落胆させられることもないでしょうが、 かたむき通信に取り上げた ガガミラノGAGAMILANO[K5] の如く其の情報開示も徒や疎かにして欲しくはない様望まれます。

若しや新規事業として取り組む方針が決定されるならば 只に売らん哉に陥らず孰れムーブメントを自社内製作するマニュファクチュール体制も視野に入れ、 セイコー、シチズン、カシオに続く本邦腕時計メーカーともなるならば 従来とは異なる宝飾品の色濃き腕時計ブランドの登場に実に面白き市場が展開されるかに思われます。

追記 (2017年3月25日)
本記事の配信より約1年半後に高級腕時計市場に参入した 株式会社TASAKIでした。 其の報は以下に挙げる記事などに今も残されています。

2015年6月に相次いで報じられると翌々8月には店頭でも扱われるようになった 当時のデビューコレクションは3シリーズでしたが 現在当該社の公式サイトの TIMEPIECES ページでは1シリーズ加えられた以下の4シリーズが案内されています。

  • Odessa(オデッサ)
  • cluster(クラスター)
  • serpentine(サーパンタイン)
  • refined rebellion(リファインド リベリオン)

孰れもTASAKIお得意の豪華なジュエリーをあしらった高級腕時計ですが 中にも時計師の 浅岡肇 氏の協力を得て世に送り出された Odessa Tourbillon オデッサ トゥールビヨン WAC 0060 は圧巻でしょう。 価格も破格の2,700万円の値付けがされています。

さて其のTASAKIですが昨日2017年3月24日非上場化の情報が大手メディアから流されました。 日経[※6] や産経[※7] の報じるところですがTASAKIからプレスリリース等の流されたものを受けた情報ではありません。 どうやら第一報は日経から齎されたようで2014年の本記事と其の後の経緯を見ても 情報源としての日経には一定度の信頼が於けるものにて、 早速Twitter上では事情通連の芳しからぬ遣り取りもされ市場情報界隈では知られた 市況かぶ全力2階建[※8] にまとめられる処です。 ともあれ SEIKOCITIZENCASIO など普及価格帯には強みを持つメーカーの多い本邦ですが なかなか高級腕時計業界には見られない所謂 JAPAN MADE ですので如何様な企業形態を取ろうとも奮闘を期待したいものです。

使用写真
  1. Pearl Shell Monument Doha( photo credit: Pureminds via Flickr cc
かたむき通信参照記事(K)
  1. 産経の捏造、謝罪記事と新聞報道の衰えぬ影響力に対するネット台頭に拠る抵抗(2012年7月25日)
  2. 薄型ムーブメントを複雑機構と位置付けるピアジェと第85回アカデミー賞授賞式(2013年3月23日)
  3. ルイヴィトン~トランク職人発祥ファッションブランドは自社製ムーブメントを携える腕時計マニュファクチュール(2012年4月10日)
  4. ケンコバさん憧れの宇部里香さんは銀座高級時計店アワーグラス店員さん~スイス時計界の重鎮達(2012年6月9日)
  5. 腕時計界にガガミラノは定番と成るか一時の流行に終わるか(2012年11月10日)
参考URL(※)
  1. TASAKI、高額時計に参入 1本1000万円超(日本経済新聞:2014年1月6日)
  2. PV数10倍増でも「東洋経済オンライン」が失敗する、たった1つの理由(空気椅子:2013年11月25日)
  3. TASAKIが続伸、1本1000万円超の高額時計に参入と報じられる(TASAKI) (みんなの株式:2014年1月6日)
  4. セイコーに続き、宝飾業界激震「田崎真珠 54年間のトップが交代」(時計・宝飾マイスター:2007年12月14日)
  5. 【TASAKI】 商号(社名)変更のご案内|株式会社TASAKIのプレスリリース(PR TIMES:2011年12月22日)
  6. TASAKI、MBOを発表 1株2205円でTOB(日本経済新聞:2017年3月24日)
  7. 非上場化相次ぐ 経営の自由度高める動き TASAKIもMBO(産経ニュース:2017年3月24日)
  8. MBKパートナーズ、真珠屋TASAKIへのMBOで2往復目のバイアウトにチャレンジ(市況かぶ全力2階建:2017年3月24日)
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