津田大介氏の国会参考人発言で違法ダウンロード刑罰化問題を考える

違法ダウンロード刑罰化問題については かたむき通信にも以下、列挙する処の如く記事を重ねて配信して来ました。

この問題に文化庁の文化審議会著作権分科会の 私的録音録画小委員会 の委員として2006年から2009年に掛けて議論も重ね造詣の深い 津田大介 氏が2012年6月19日の文教科学委員会に参考人として出席し発言しました。 これをakiyan.comさんでは本日2012年6月20日に 違法ダウンロード刑罰化への津田大介氏の国会参考人発言を書き起こしました で全文書き起こし配信しています。

akiyan.comさんの記載にもある通りこの参考人発言は 違法ダウンロード刑罰化問題について一般に理解を促進出来る内容になっているように思います。 またこの参考人発言は制限つきですがニコニコ生放送でも 違法コンテンツダウンロードの厳罰化へ 【参議院 国会生中継】 ~平成24年6月19日 文教科学委員会~ (番組ID:lv97291097) で視聴可能です。

かたむき通信での主張は一点に集約されます。 その意を汲んだかの如き一文が発言内に実に簡便に集約された形で含まれていました。 akiyan.comさんが追加した見出しの最後 対案は、文化予算を増やすこと にそれは有り、如何に引用します。

これ、刑事罰化をやって、多分売上伸びないって最悪ですよね。 情報環境に対して悪影響があって、しかも音楽産業も伸びないなんていったら、 これはもうある意味でいうと政治の不作為だと思います。

かたむき通信に長文を重ねたことが恥ずかしくもある一文ですが、 かたむき通信の主張はここに全て表現されていました。 そして尚、参考にすべき内容が多く含まれる参考人発言であるように考えます。 中にも興味深い部分を幾つか本記事で見てみたいと思います。

akiyan.comさんの見出しに頼ればその1段目 前段、自己紹介 と2段目 2006年から2009年の議論の状況としては、刑事罰はバランスが悪い に見えるのが違法ダウンロード刑罰化の現実的問題点の一つ目でしょう、 この刑罰化は余りにバランスに欠けている点です。 これは津田氏を含まない著作権法の法曹関係者で構成され法政小委員会で以ても 全員が同意する処であると言います。 しかも3年の議論を重ねた上で更に議論を重ねる中での総意でもあります。 中には次段の 政治家の先生は大変だとは思うけど、厳粛に受け止めてほしい に、違法化自体に反対する津田氏と鮮鋭に対立した弁護士さえ同意を示しています。 それであるにも関わらず今回音楽業界は潜在ユーザーとも言える 所謂違法と指摘される行為を為した人々に刑事罰を与える法案を ごり押しせんと企んでいる訳です。 音楽業界の心根が実に現れている部分になるでしょう。

次の段、4段目の 正しい認識の上で議論すべき には根拠としての数字を挙げての発言となっています。 音楽業界の主張する6,800億円近くの被害額の信憑性について、 1998年の販売ピーク時に売上総額6,000億円であったものが今2,500億円であると、 例え売上現代の原因のすべてが違法ダウンロードの責任であるにせよ、 それは3,500億円であって到底6,800億円には及びません。 此処にも音楽業界の恣意的な自己都合による数字のすり替えが見て取れるようです。 凡そ他に数字が挙げられても信頼にたるものではなくなるのが普通でしょう。

5段目 僕自身も著作者であるし、音楽業界が無くなったら困る 及び 6段目 そもそもインターネットと著作権は相反する についてはかたむき通信に主張する処の内容があります。 津田氏は些か和らげて発言されていますが、 インターネットは中抜きとして機能します。 即ち音楽で言えば製作者と視聴者が揃えば基本的に他は要りません。 勿論、それだけでは例えば溢れる情報で 視聴者が何を選択すれば良いのか分からなくなる問題など発生するでしょう。 従ってそれをサポートする音楽業界は必要となるでしょう。 しかし百歩譲っても従来のCDパッケージを物流させるような形態は これからは音楽業界とは呼べる筈もありません。 音楽業界に留まりたいのならば最低限その業務形態を変革する必要があるのです。

7段目の 万引きとは違う についてはかたむき通信には B-CAS 問題のカテゴライズに於いてスティーブ・ジョブズ氏の言を持ち出しました。 2012年5月19日の配信記事 B-CASカード書き換え問題は新しいiTunesを齎すか? 内に記す処です。 以下引用します。

音楽業界は著作権を楯にするばかりでいつ迄たっても 効果的なソリューションを見出すことは出来ませんでした。 剰え本来顧客である筈の利用者を犯罪者呼ばわりさえするしかなかったのです。 ジョブズ氏はユーザーは不正をしたくてしているのではない、 せざるを得ない立場に追い込まれているのだとして、 両者に利益を齎す形の解決策を提示、 それがiPodとiTunesだったのです。

音楽業界の根本的問題はこのようなソリューション提示能力がない処に持ってきて 既得権を守ろうとすることこそに有る、と考えて良いかと考えます。

8段目 バッファがあるのと即違法は違う については違法ダウンロード刑罰化の現実的問題点の二つ目になるかと思います。 しかもその即時の刑罰決定は守旧派音楽業界の 既得権確保のためであるとなったら何をか況やでしょう。 それほど潜在ユーザーに物理的困窮を齎したいのかと 少々これを主張する人物の人間性をも疑いたくなる部分です。

9段目 社会全体に影響があることが問題 及び10段目の もし全ての著作物が対象になったらどうなるか の内容は至極尤もな話しです。 高度成長期自体の闇米染みた話しで、 石を投げれば犯罪者に当たる、という様相を呈すことは明らかでしょう。 闇米の問題は戦時下の状況を引き摺った仕方のないものであったとしても、 この状況を新たに作り出そうとするのは時代に逆行すること甚だしくあります。

10段目 コンテンツ産業は守るべきだし、制限は設けるべき の津田氏の主張には今回記事を書いて来て余りに主張が氏を擬えるようで 面映くもあるのですが、これも全面的に賛成です。 製作者の権利は守られるべきであると考えます。 しかしそれは守旧派音楽業界の主張する手法とは全く異なる方法で実現されるべきであるとも考えます。 それは実に難しい問題であることも確かです。 その一つの解がスティーブ・ジョブズ氏が齎したものでした。 しかしそれが全てではなく更にこの問題は展開し、深めるべきで、 出来うるならば無駄な法案作成より此方に注力すべきなのです。

津田氏の発言は最終前段 これは経済問題であるからして、難しい 及び冒頭に述べた最終段で 対案は、文化予算を増やすこと 対案が述べられます。 確かに引き合いに出された道路行政など、他にも問題点は大きいものもあり、 予算執行に於いての考慮は欠かせないものだと思われます。 但し今回の違法ダウンロード刑罰化も国会予算の無駄遣いであるとは感じる処です。

今回津田氏の国会参考人発言は非常に参考になりましたし、 かたむき通信的にも意を強くする部分がありました。 機会があればこの問題にはまた触れたくも思います。 またこの書き起こし記事を配信されたakiyan.comさんには この場を借りて御礼申し上げたく思います。

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