広い世代に長い間に渡り親しまれているアニメシリーズ ルパン三世が40周年を記念して再度テレビアニメ化されることはかたむき通信でも 2012年3月11日に TVアニメシリーズ『ルパン三世』 でお伝えしたところですが、 この露払いとして日本テレビでは、 ルパン三世VS名探偵コナン (2009年テレビ用アニメ映画)及び ルパン三世 カリオストロの城 (1979年劇場用アニメ映画) の過去に評判を呼んだ2アニメ映画を 同局金曜ロードショーで2012年3月23日に前者、 3月30日に後者を2週連続で放送するとしました。
特に後者の劇場用アニメ ルパン三世 カリオストロの城 に於いては今でこそ 宮崎駿監督 と監督付きで呼ばれるのはごく当たり前の風景ですが この作品が宮崎駿氏の初監督作品であったのでした。
まだまだ宮崎駿監督の真価が世に認められぬ頃にしても 作品の秀逸さは勿論群を抜いています。 更には最新作に近付くほどメッセージ色の濃くなるのは 氏のコントロールが効けば効くほど如実になる訳ですが、 カリオストロの頃にはエンターテインメントに徹した感があります。 どちらが良いとか悪いとかではなく夫々の好む処となるでしょうし、アニメ本来の特質、 動く という部分は両者些かも遜色ありません。 本記事で再評価する迄もなく何度も、今回で13度目のテレビ再放映であり、 其の度に集客効果を求められるのは充分世間に高評価を与えられているからでしょう。 そして尚、良質なエンターテインメントとしての劇場映画は 理屈抜きで見る者を楽しませてくれます。
観賞の上での作品談義も楽しいものです。 このカリオストロでは何が盗まれたかがしばしば論議の的になりますが、 勿論銭形警部により喝破されお姫様が認めた如く其の心はおいておくとして、 ドラマツルギーとしての ルパンは泥棒である という命題を真としたとき ルパンは何かを盗まねばなりません。 これが普通の宝石や現金では面白くありません。 従って物語り冒頭では普通に現金をFIAT500に詰め込むシーンが描かれますが、 本題では取り分け普通ではないものを盗ませたい事情があります。 其処で宮崎監督が辿り着いたのが ローマの遺跡 でした。 これが出来たとき物語の骨子は固まったのではないかと拝察します。 しかし遂にルパンはお宝は手に入れることがなりませんでした。 彼曰く、彼の ポケットには少し大き過ぎた のでした。
さて物語の骨子の上に肉付けされるエンターテインメント部分でも 特に取り上げたいのが前半部のカーチェイス場面でしょう。 トッポジージョと呼ばれる往年の人気番組の主人公の名を二つ名に持つ ルパンと相棒次元の愛車FIAT500はサイドブレーキと見紛うレバーを引いた途端 ターボチャージャーが爆発して大劇走を始めます。 悪漢に追われるお姫様を助け出すための大パフォーマンスの開始です。 アニメは動くもの、という監督の主張の面目躍如たるシーンの連続です。
遂にはお姫様救出に成功したルパンが 崖からの落下の際に取り出だしましたるピアノ線の、 これを手繰って上に上るのではなく、 下へ下へとバックルを操作して下るシーンもまた 実にリアリティを感じさせてくれ物語への没入を容易にしてくれます。 こんな演出が随所に効いていて神は細部にこそ宿る、 と言う訳で本アニメを名作たらしめているのではないでしょうか。
まだまだ ルパン三世 カリオストロの城 に関しては語りたいことが有りますが、 それは今回テレビ放映を見られる方に委ねましょう。 語りたいことは2012年3月30日の金曜ロードショーでは 良質のエンターテインメント作品として また新たに多くのファンの心を掴むでしょう。
追記(2019年2月10日)
本記事に紹介した如く再放映が13回目となれば其れだけで既に其の不動の人気が伺われる訳ですが、 其れより7年程を経て見れば以降も再放映は繰り返され、 其の視聴率もビデオリサーチ調べで 2015年の14回目には14.5%、 2016年の15回目には12.4%、 そして去年2018年の16回目には11.0%と、 驚きの視聴率を叩き出していますから、 唯に放映さえすれば二桁視聴率を稼ぎ出す此のドル箱は、 2年弱で一度のペースであれば今年末、来年初頭にはまた再放映が企画されるのではないでしょうか。
此の如き最早名作として普遍性をも獲得し得た感のある本作の通用するのは本邦だけに止まらぬのは、
本ブログ2012年3月11日の記事
TVアニメシリーズ『ルパン三世』
の2015年4月21日追記にも記した通り、ルパン三世のスピンオフ作品として制作された
次元大介の墓標
が同年5月からイタリアで先行放送された状況からも想像に難くありません。
そして今回、アニメ映画
ルパン三世カリオストロの城
がルパン三世のお爺さんたる
Tweetの内容としてはフランスに居する日本人留学生に向けて、 勝手知ったる日本アニメの代表作でフランス語学習の一助にしようと言うものですが、 世界の巨匠宮崎駿を擁して堂々たる本国凱旋を果たしたかのような誇りも垣間見える文言です。 以下にフランス語に吹き替えられた『ルパン三世カリオストロの城』のYouTubeに共有された動画を埋め込み置きます。
Tweetにはフランスメディアの
Le Point
が2019年1月24日に配信した紹介記事
Pourquoi il faut voir Le Château de Cagliostro de Miyazaki
へのリンクも貼られており、欧州中にも最も所縁の深いルパンのルーツたるフランスでの公式上映に、
隠然たる人気を誇りながら如何に製作公開から40年もの長年月の掛かったのかが、
記事冒頭にディズニーの
白雪姫
や
トイストーリー
なども例証に挙げながら、
追記(2019年7月17日)
本記事に紹介した日本が世界に誇る巨匠、宮崎駿氏の初監督作品 『ルパン三世カリオストロの城』 がブルーレイの後継光ディスク規格である 4K ULTRA HD™ で再登場します。 此れは、以下列挙する処の12社が豊かな映像体験を齎す目的に結集した連携団体 UHD Alliance,Inc. の商標です。
新規格は、高画質、高輝度、高色域を以てブルーレイでは表現できなかった映像美を実現し、 4K UHD(2160p、3840×2160、60fps)の高解像度、高フレームレートをサポートします。 従来と比較して何もかもが「高」付きの高々尽くしの映像表現となる訳です。 詳細を述べれば、 先ず、解像度は従来のフルハイビジョンの4倍もの画素数で構成されますから、必然保存メディアは大容量が要求され、新規格は其れに応え得るものです。 次に、輝度に関しては従来の輝度ピークの約10から100倍もの性能を有し、即ち大きく広がったダイナミックレンジで、 表現にメリハリが生まれ、従来は闇に埋もれ勝ちな暗い場面での鮮明な描写を可能とします。 そして色域は世の中にある物体色の99.9%と言いますから、ほぼ総てと言って宜しい程の広領域をカバーするため、 近い色、似た色と言う次元を超え、ありの儘の色を再現して映像を堪能出来る理屈となり、 此れは漫画映画に於いては宮崎監督が常に拘る処の 色彩設計 を監督の意図通りに楽しめる道理となります。 下に埋め込んだ販促用の動画では、色彩の明暗の飛躍的向上を分かり易く示すために、 従来と新規格のものとを左右に比較配置した映像も用意されています。
加えて音声も7.1chサラウンドという多次元サウンドが提供され、リッチになった映像を損ねない臨場感たっぷりに楽しめる音空間が繰り広げられます。 斯くも期待を煽られる 『ルパン三世 カリオストロの城』4K ULTRA HD™版 の発売は来週、2019年7月24日水曜日ですが、既にアマゾンでは予約購入可能となっているばかりではなく、既に二百件を優に超えるレビューが付いているのには驚かされます。 流石『カリオストロ』と言った処でしょう。 なお、前規格となるBlu-ray機器との互換性はありませんので注意が必要です。 ソフト再生には対応プレイヤー若しくは再生可能に整えられたパソコン、及び4Kモニタが必須となります。
使用写真- Zenigata (from Lupin the 3rd)( photo credit: impala ark via Flickr cc)
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