iPhoneの如く世界的に売れる商品はそれを擁する企業を 時価世界一に押し上げる[K1] と共に外部にも大きな影響を与えます。 ポリマテック社が倒産[K2] したのもiPhoneが携帯電話の世界を一変させ、 スマートフォン一色となった其処には既に ボタンが必要とされなくなったのにも一因が有りました。 そしてまた同時期にもっと直接的な影響を蒙った企業が倒産していました。 神奈川県の東証マザーズ上場企業 シコー株式会社 がそれです。
シコー社の負債総額は帝国データバンク[※1] 及び東京商工リサーチ[※2] 共に85億945万としています。 同社は1974年6月に創業、翌々76年7月に法人改組した各種精密小型モーターの製造販売会社とされ、 米アップル社の iPhone に同社の小型モータが採用され、 2010年12月期には約137億8300万円の売上を計上するもそのモデルチェンジに伴い 大幅に受注が落ち込んだのが主要因として挙げられます。 そして遂に2012年8月10日、同社は東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、 同日中に保全命令を受けたのでした。
この模様を更に踏み込んでビジネスジャーナルでは詳しく[※3] 伝えます。 シコーは携帯電話やスマホに搭載する小型カメラの自動焦点用モーターを手掛けていた処、 上記のようにiPhoneに採用され社史上最高の売上を計上したのでした。 この売上増大に併せ同社は中国で大量の労働力を確保した処にアップル社から切られたことで この労務費が重く圧し掛かったと言う訳です。 最終損益が30億円を超えてはこの企業規模では一溜まりもありません。 アップル社に切られたのが2011年9月、その年末での決算の状況です。
同社は技術的にも中国や韓国から激しく追い上げられていました。 アップル社に取っては選択肢が広がることになります。 而して同社は遂に破綻へと追い込まれることになったのでした。
これを見れば如何なる技術力を以てしても 最終製品に生殺与奪を握られた下請けの状態では 企業基盤は実に危ういものと謂わざるを得ないのが明白です。
かたむき通信にはこの倒産を受け既視感を覚えるのはシャープ社に於いてでした。 シャープはその液晶技術に高いものがあり、近く発表が予想される iPhone5 の液晶パネルの生産を委託されたとの情報[K3] が入って来ています。 しかしそれは手放しで喜べる話しではない様相を呈して来ました。 なんとなればそれはシャープの片手間に営む下請け業務ではなく 若しかしたらそこに活路を見出さねばならない程に状態が悪化しているからなのでした。
シャープはテレビ事業及び液晶パネル事業が大幅に減益し、 外部提携に活路を求めようとした処、折悪しく株価が低迷、 提携先との交渉も弱みに付け込まれ暗礁に乗り上げ[K4] ています。 若しこの状態が続けばシャープ社はその収益をアップル社の下請け事業に頼らなければならないでしょう。 そうなればシャープ社は何時シコー社の二の舞に陥らないとも限りません。 かたむき通信の提言の如くソフトバンクに身売り[K5] をせずとも、何とか自社ブランドで勝負出来るヒット商品こそ 同社には今必要とされているのです。
シャープ社に限らずとも今回のシコー社の倒産事案は 様々な問題を日本メーカー特に家電、電機関連に投げ掛けているようです。
かたむき通信参照記事(K)- アップル社によるマイクロソフト社時価総額世界一記録の更新を見る(2012年8月21日)
- ポリマテック倒産~世界を変えたiPhoneの思わぬ影響(2012年8月10日)
- シャープ危機~株価ストップ安が鴻海出資交渉に影響(2012年8月4日)
- シャープの身売り先にはソフトバンクが好適かも知れない(2012年8月28日)
- 精密小型モーター製造 東証マザーズ上場 シコー株式会社 民事再生法の適用を申請 負債85億945万1823円(帝国データバンク:2012年8月10日:2019年6月25日現在記事削除確認)
- シコー(株)[神奈川] 小型モーター製造 民事再生法申請 負債総額85億945万円~マザーズ上場・携帯電話向けのモーター製造~(東京商工リサーチ:2012年8月10日)
- 最高時価総額の裏で…アップルに切られ日本企業が経営破綻(ビジネスジャーナル:2012年9月3日)