JAPEX日本初シェールオイル採掘~新資源の課題はノウハウ蓄積と採算性

液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)が代替エネルギーとして 重要な位置を確立しそうな勢いです。 日本近海には豊穣なメタンハイドレート床、と言うのか、田と云うのか 埋蔵量の豊かな地域が眠っている[K1]のでした。 メタンハイドレートは天然ガスエネルギー資源であり、 白い結晶状をなしているため燃える氷と言われますが、 今回採掘されたそれは 新石油 と呼んでも良いものではないでしょうか。 いみじくも国内で初めてシェールガスを含むオイルの採掘に成功したのは 石油資源開発株式会社(JAPEX) でした。 各メディアの挙って伝える処[※1~3] です。

採掘場所は秋田県由利本荘市に在る 鮎川油ガス田 でその地下約1,800メートルからの採掘に成功したと伝えられます。 既存の油ガス田であるのもコスト削減に役立てる目的とは言え新石油としての印象を深くします。 JAPEXではアメリカのテキサス州に於けるシェールオイル開発に参画するなどして 従来の技術では難しかったシェールオイルの採掘ノウハウを獲得、 それを活かし今回国内で初めての採掘に成功しました。

シェールオイルの存在の目処を付けた位置に希釈塩酸を注入し、 岩盤の割れ目に詰まった石灰などを溶かした後、 回収した塩酸を含む液体中にシェールガス原油の成分を 遠心分離器で分析した結果確認したのでした。

鮎川油ガス田周辺のシェールオイル埋蔵量は推定約500万バレルとされますから、 2009年の時点で440万バレルとされる日本の一日の使用量[K2] から鑑みれば埋蔵量は小規模と言わざるを得ません。 しかしその採掘ノウハウ、開発及び生産技術についての蓄積がなされるのは間違いありませんし、 同じ天然ガスであればその利用法については上記した メタンハイドレートへの応用も可能となるでしょう。

秋田県由利本荘市鮎川駅  大きな地図で見る

シェールオイルは既にアメリカでは実用段階に入っている処か、 そのコストパフォーマンスは米国のエネルギー価格を世界最低の水準迄押し下げ[K3] ています。 埋蔵されるのは決して米国だけにないにも関わらず、 唯に米国のみがその低廉なエネルギーを享受出来るのはノウハウあってこそなのでした。 従って新資源の利用ノウハウこそが国家の生命線を分けると言えるのです。

この低廉なエネルギーの獲得に依って、 米国のエネルギー政策は当然の如く舵を切ろうともしています。 オバマ政権に於いて原子力発電が当初、 スリーマイル島の事故以来30年振りに強力に推し進められたにも関わらず、 今や足踏み状態にあるのは東日本大震災に連なる福島原発の問題を受けただけではないのでした。 そして遂には米政権に於いて原発を推し進めたい既得権益である GEのCEOでさえ 原子力発電は経済的優位性を失いつつある と発言[K4] しているのです。 米国では既に大きく 天然ガスシフト が展開しているのでした。

転じて日本に目を遣れば、 天然ガスシフトについては遣った目を覆うばかりの様相[K5] を呈しています。 この現状はどう贔屓目に見ても原子力発電の推進に因って潤う既得権者が 天然ガスシフトに対する抵抗勢力として機能しているとしか思えないものです。

今回のシェールオイルの採掘成功に依り、 JAPEXの株価は前日比1割高の伸びを示したと言います。 投資家にも好感されるこの事案は日本国民の期待の兆しと言っても良いでしょう。 この小さな成功が抵抗勢力がその存在意義を失う程に育ち、 大きなエネルギー問題に対する解決策の一つに成長して欲しく思います。

かたむき通信参照記事(K)
  1. メタンハイドレート開発急ピッチ~日本がエネルギー資源大国に変貌する可能性(2012年5月21日)
  2. 国内最大規模新潟県沖油田・天然ガス田(来年4月試掘開始)の可能性を試算して見た(2012年6月18日)
  3. 米国先行のシェールガスのエネルギー資源開発へのインパクト(2012年5月25日)
  4. 経済的優位性を失いつつある原子力発電と代替エネルギーの育成(2012年7月31日)
  5. 原発是非の鍵を握るLNG(液化天然ガス)利用の日本に於ける動向(2012年7月19日)
参考URL(※)
  1. シェールオイル、試験採掘に成功 秋田で国内初(朝日新聞:2012年10月3日:2019年11月3日現在記事削除確認)
  2. 秋田でシェールオイル初採取 来年度から試験生産 石油資源開発、国内開発に弾み(日経新聞:2012年10月3日)
  3. 国内初、秋田でシェールオイル採取成功 石油資源開発(MSN産経ニュース:2012年10月3日:2019年11月3日現在当該サイトのサービス停止確認)
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